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投資信託の所得税とは?税金の仕組みと最適な節税対策を解説

2025.05.26 Thu

投資家から集めた資金をファンドマネジャーが投資・運用し、運用成果を分配する投資信託。少額から始められ、投資の専門家に運用を任せられる、容易に分散投資ができることから人気の金融商品です。うまく活用すれば資産形成に役立ちますが、その利益には税金が課せられることを忘れてはなりません。ここでは投資信託にまつわる税金の仕組みや、節税方法などについて解説します。

目次

投資信託と所得税の関係

投資信託から得られる利益

投資信託から得られる利益には「分配金」と「譲渡益」の2種類があります。

分配金とは、運用の結果、得られた利益を口数に応じて決算ごとに分配するお金のことです。また、分配金は、分配後に基準価額が個別元本と同額または上回っている場合の「普通分配金」と、下回った場合の「特別分配金」にわかれます。

一方、譲渡益とは投資信託を売却(解約)したときに得られる利益のことです。売却時の基準価額が購入時の取得単価を上回った場合に発生します。

投資信託の利益に対する税率は20.315%

投資信託で得た利益に対しては税金がかかり、税率は20.315%です。

投資信託の利益に対する税率20.315%=(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)

ただし、投資家にとって利益となる普通分配金は課税の対象ですが、元本の払い戻しになる特別分配金は非課税扱いとなります。

例えば、基準価額1万円のときに購入して、分配前の基準価額は1万2000円。分配後の基準価額が1万1000円なら購入時の基準価額(個別元本)を上回っているので分配金1000円はすべて普通分配金となり、20.315%が課税されます。

一方、基準価額1万3000円のときに購入し、分配前の基準価額は1万2000円、分配後の基準価額は1万1000円なった場合、個別元本を下回っているので分配金1000円はすべて特別分配金(元本払戻金)となり、課税されません。

次のようなケースも考えられます。基準価額1万1500円のときに購入し、同じように基準価額が推移し、1000円の分配金が支払われる場合、分配後の基準価額1万1000円は個別元本を500円下回っているので、分配金のうちその分(500円)は特別分配金(元本払戻金)で非課税、残りが普通分配金として扱われます。

譲渡益に関してはシンプルに20.315%の課税ですが、信託財産留保額といった解約手数料が発生した場合は、純利益から差し引くことができます。例えば投資信託の売却に伴い1万の譲渡益と200円の解約手数料(信託財産留保額)があった場合、これを差し引いた9800円が課税対象になります。

投資信託にかかる税制

投資信託の利益は「申告分離課税」に該当

投資信託の分配金・譲渡益は、他の所得と分離して税額を計算し、確定申告により納税する「申告分離課税」に該当します。よって、普段は確定申告をすることのない会社員でも、投資信託の利益があると手続きを行う必要があります。

税額の計算は先述した通り、利益に20.315%を乗じるだけです。例えば、上記の例だと以下の通りです。

投資信託にかかる税金=(投資信託で得た利益-購入・売却(解約)時の費用)×20.315%

上記の例=(1万円-200円)×20.315%=税額1990円

なお、投資信託で得た利益は、上場株式等や特定公社債等と損益通算することもできます。例えば、投資信託で年間1万円の利益があったとしても、上場株式で1万円の譲渡損があると、損益はプラスマイナスゼロに。節税になるので、投資信託や上場株式等の運用で損失があるなら確定申告をしましょう。

分配金と通算後の譲渡損失は、確定申告をすることで翌年以降3年間の繰越控除が可能です。この場合、損失を繰り越すため毎年確定申告をしないといけません。

確定申告が不要になるケース

以下の条件を満たしていると、投資信託で利益を得たとしても確定申告は不要です。

ケース①投資信託で得た利益が年間20万円以下

給与以外の所得が20万円以下だと申告不要制度が適用されるため、原則として確定申告は不要となります。ただし、給与の年間収入が2000万円を超える、医療費控除など各種控除を受ける場合は、投資信託の利益と関係なく確定申告を行わないといけません。

ケース②運用で損失が出た場合

投資信託は元本保証の金融商品ではないので、譲渡損失がでる可能性もあります。課税対象となる利益がないので確定申告は不要です。

ケース③源泉徴収ありの特定口座を利用

投資信託を始める際に証券会社などで解説する口座には、一般口座と特定口座があります。前者を利用している場合は、自身で税額を計算して申告をしないといけません。

特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」のどちらかを選びますが、源泉徴収ありの特定口座は販売会社が特定口座の中にある投資信託の損益を計算し、利益が出ていれば税金を徴収したうえで利益を口座に振り込むので、投資家が確定申告をする必要はありません。損失が出た場合も自動的に損益通算を行います。他方、源泉徴収なしの特定口座は徴税事務を行わず、利益が出たら投資家が確定申告をする必要があります。その際は、金融機関から公布される「特定口座年間取引報告書」をもとに確定申告を行います。

なお、現在一般口座で取引をしていたとしても、特定口座へ移行することは可能です。確定申告を避けたい場合は、はやめに手続きを済ませましょう。これから投資を始めるなら、最初から特定口座を開設したほうが、後の手間がかかりません。

投資信託の税制優遇制度をその活用法

NISA(小額投資非課税制度)の活用

投資信託で得た利益を非課税扱いにできる制度もあります。その1つがNISA(小額投資非課税制度)です。

NISAには上場株式や投資信託が対象の「成長投資枠」と、金融庁が長期・積立・分散に適したと認めた投資信託が対象の「つみたて投資枠」の2つがあり、前者は年間240万円、後者は年間120万まで買い付けることが可能です。これらを活用して投資信託に資金を投じ得た分配金・譲渡益は非課税扱いになるので、どれだけ利益が出ても税金はかかりません。

NISAについて下記の記事にて詳しく解説しています。

(NISAに関する無料小冊子はこちら:始める前に知っておきたい! 意外と知らない! 新NISAの落とし穴

iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自身で掛け金を拠出し、運用しながら老後資金を積み立てる私的年金の1つです。運用の対象には投資信託も含まれ、分配金・譲渡益は非課税扱いになります。他にも掛金が全額所得控除の対象となり、60歳以降に受け取るときも退職所得控除や公的年金等控除を受けられるので、大きな節税効果を期待できます。

損益通算や繰越控除は忘れずに

NISAやiDeCoを使わず投資信託を運用する場合、利益に対する課税は避けられません。ただし、確定申告には手間がかかるので、まずは源泉徴収ありの特定口座を活用することです。また、損失が出た場合は損益通算や繰越控除を活用しましょう。

まとめ

ここまでの解説で、投資信託の利益や税制などについて理解できたと思います。投資信託は手軽に始められる資産運用の1つであり、私たちにとって身近な金融商品です。投資する機会も多いので、こういった知識を頭に入れた上で取引に臨みましょう。

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