節税と脱税の違いとは?
法的な境界線と正しい節税対策を解説


「節税」「脱税」。たった一文字の違いですが、行った際の結果は雲泥の差があります。しかしながら、その違いを明確に説明できる人は、多くはないのではないでしょうか。節税と考えて行ったことが、脱税に当たることもあり得ます。しっかりその違いを理解しておきましょう。
節税と脱税の基本的な定義
「節税とは」
節税とは、法律の範囲内で税金の負担を軽減する行為です。たとえば課税所得は、収益から経費を差し引いて算出します。そのため、使った経費を忘れずに計上することは節税につながります。
「脱税とは」
一方で脱税とは、違法な手段で納税額を少なくする行為です。申告するべき所得額を故意に低くしたり、経費を過剰計上したりといった行為は、脱税と判断されることがあります。
ありがちな脱税行為の例
二重帳簿の作成
申告書に記載している銀行口座とは別の口座をつくり、帳簿も2つ作成して売上額や経費をごまかす行為です。税務調査官が銀行や売上伝票などを入念にチェックすることなどで発覚します。
売上を隠す
現金収入をなかったことにしたり、毎月の売上から一定額を引いたりすることは脱税行為です。このような行為は、業務記録や取引先との関係を調査することなどで発覚します。
領収書を偽造する
支払った金額を実際よりも多くしたり、日付を書き換えたりする行為です。
架空人件費を計上する
架空人件費とは、実在しない人の人件費を計上し、経費を水増しして脱税する方法です。税務調査官が給与台帳や源泉徴収簿をチェックすることなどで発覚します。
備品などを偽って廃棄したことにする
パソコンなどの備品を、実際は使用しているのに帳簿上では廃棄したことにするといったことは脱税行為です。
「脱税が発覚する典型的なパターン」
このような脱税行為の多くは、税務調査によって発覚します。調査はある程度の規模の企業であれば、5年前後の周期で対象となります。個人事業主であれば、「急に生活が派手になった」「多額の経費を申告している」といった場合は対象になりやすいでしょう。また、密告によって対象となるケースも少なからずあります。
脱税が発覚した際のペナルティ
脱税が発覚した際のペナルティは、次の3つがあります。
延滞税
納税が遅れた利子のようなものです。遅れた際だけでなく、修正申告をしたときにも課せられます。
加算税
納税額が少なかった場合に課される「過少申告加算税」、期限までに申告しなかった場合に課される「無申告加算税」、源泉徴収税額を納付期限までに納付しなかった場合に課される「不納付加算税」、事実を隠蔽した場合に課される「重加算税」の4つがあります。
刑事罪
基本的には10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科されるものと規定されています。
節税と脱税の間のグレーゾーンもある
違法ではないものの、特殊な方法で納税額を減少させる行為を租税回避といいます。たとえば、タックスヘイブンといわれる税金が低い国に、資産や法人を移して税負担を軽減させるといった方法です。この行為は脱税ではありませんが、世の中からは批判の対象となっているグレーゾーンといえます。
節税の正しい方法
それでは胸を張って行える節税のおもな方法をご紹介しましょう。
「非課税制度がある投資方法」
NISA(ニーサ)
NISAとは、一定の投資信託を対象とし、投資で得られた利益が非課税になる国の制度です。通常の投資では、得られた収益に約20%の税金がかかりますが、NISAではかかりません。
NISAについて下記の記事にて詳しく解説しています。
(NISAに関する無料小冊子はこちら:始める前に知っておきたい! 意外と知らない! 新NISAの落とし穴)
iDeco(イデコ)
iDecoとは、個人型確定拠出年金のことです。自分が用意した掛金を、投資信託などで運用し、資産を形成します。iDeCoによって得た利益には税金がかかりません。
「各種控除制度」
医療費控除
家族の分も含めて1年間に支払った医療費が基準額を超えた場合、確定申告をすることで税金の一部が還付される制度です。
生命保険料控除
1年間に支払った生命保険料のうちの一定の金額が、その年の所得金額から差引かれる制度です。
住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高(借入額)に対する一定割合の金額を所得税から13年間(中古住宅は10年間)控除する制度です。
「ふるさと納税は節税対策になるのか?」
ふるさと納税は、自分で好きな地域を選んで寄付という形で応援し、返礼品を受け取れる制度です。この制度を利用すれば2,000円の自己負担金を差し引いた金額が寄付金控除され、その分所得税と住民税が控除されます。しかしながら、ふるさと納税は節税とはいえません。2000円を超えた分が控除されるので、実際に支払った金額は変わらないからです。とはいえ、返礼品を受け取れるだけお得といえます。
税務調査を受ける際の注意点
個人事業主はもちろん、たとえサラリーマンであっても税務調査を受ける可能性はゼロではありません。副業をしている、相続を正しく申告していない、といった場合は調査の対象になり得るからです。税務調査を受ける場合は、以下の3つに注意しましょう。
協力的な態度を心掛ける
調査自体を快く思う人は、ほとんどいないはずです。しかし、そこで露骨に不快な態度を見せてしまうと、「何か隠し事があるのでは?」と疑われることにつながります。終始協力的な態度に徹しましょう。
雑談中も気を抜かない
たとえば、雑談で趣味の話をした場合、その道具が経費計上されていないか疑われるかもしれません。聞かれたことだけに答える、という態度が無難でしょう。
いい加減なことは言わない
分からないのに適当に答えたりすると、後で辻褄が合わなくなります。それが調査官の不信感の原因になるかもしれません。
まとめ
必要経費を適切に計上したり、各種控除を利用したりといった節税は、税法によって認められた行為で、脱税とはまったく異なります。余分な税金を支払って資金繰りに困らないためにも、積極的に行いましょう。
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