変額保険とは?
仕組み・メリット・注意点までやさしく解説


保険会社が取り扱っている、さまざまな保険商品。一般的には万が一の際や病気・ケガなどに備えるイメージですが、資産形成に活用できる商品があることをご存じでしょうか。それが生命保険の保障と資産運用を兼ねた「変額保険」です。ここでは、同商品の特徴やメリット・デメリットについて解説します。
変額保険とは?
基本的な仕組み
変額保険とは生命保険としての「保障」と資産形成を兼ね備えた保険商品のことです。保険契約者が支払う保険料の一部は諸経費に充てられ、残りの部分を株式や債券、投資信託などを対象とする「特別勘定」で運用し、その運用次第で将来受け取る保険金や解約返戻金は変動します。
他の保険との違い
定額保険や終身保険は、死亡保険金や解約返戻金があらかじめ定められていますが、変額保険はそうではりません。死亡・高度障害が対象の基本保険金には最低保証があり、運用成績が悪い場合は最低保証金額を受け取り、良い場合は基本保険金を上回る保険金を受け取ることが可能です。ただし満期保険金や解約返戻金には最低保証がなく、運用成績により変動する仕組みです。大きな金額になることもあれば、払込保険料の合計額を下回る恐れがあります。
主なタイプ
変額保険は有期型と終身型の2種類に大別できます。前者は5年、10年など保険期間が定まっている商品で、この間に被保険者が死亡・高度障害状態になると死亡・高度障害保険金を受け取り、満期を迎えると満期保険金を受け取ります。その際、運用成績が良ければ基本保険金を上回り、悪ければ下回る可能性があります。
後者は解約しない限り保障が継続するタイプです。保険料の払込みは一定年齢までの有期払いと一生涯続く終身払いがあり、払込期間満了後も保証は一生涯続くのが特徴です。一方、満期はないので満期保険金はありません。死亡・高度障害保険金が基本保険金額を下回ることはなく、運用次第で解約返戻金が払込保険料の合計額を上回る・下回る可能性がある商品です。
2つに加え「変額個人年金保険」もあります。これは、運用実績により受取額が変動する個人年金保険のこと。一括もしくは毎月払い込んだ保険料を運用し将来年金として受け取るのが基本的な仕組みですが、年金総額の最低保証の有無、受取期間が一定もしくは一生涯など、保険会社によりその内容は異なります。
変額保険のメリット
資産運用をしながら保障が得られる
変額保険は保険と資産運用を一体化させた商品です。運用が不調でも死亡保険金・高度障害保険金といった基本保険金額は最低保証されながら、資産運用によるリターンも追求できる一石二鳥の仕組みになっているのはメリットでしょう。また、運用自体も専門家に任せられるので手間がかかりません。定期預金のような安全資産では得られにくいリターンを目指しつつ、万が一のさいは保険金が遺族に支払われるため、資産形成とリスクヘッジの両方に活用できます。
インフレ対策になる
定額の保険では、インフレ(物価上昇)が進行すると受け取る保険金の実質的な価値は下がります。他方、変額年金は運用成績が良いと満期保険金や解約返戻金が増加するため、インフレ対策としても効果を発揮します。一般的に景気上昇局面ではインフレが加速し、特別勘定の運用成績もよくなる傾向があるからこそ、機動的に運用できる変額保険は使いどころがあるといえるでしょう。
税制優遇を受けられる
有期型・終身型の変額保険、変額個人年金保険は、一般生命保険料控除の対象になり、所定の条件を満たすと年末調整や確定申告で、所得税は最大4万円、住民税は最大2万8000円の所得控除を受けられます。加えて、運用期間中の収益は課税対象となりません。満期時や解約時に得た利益は一時所得として扱われますが、控除や軽減税率により抑えられるケースもあります。税負担を抑えながら資産を増やせる可能性も期待できるのです。
変額保険のデメリット・リスク
元本割れのリスクが生じる
死亡・高度障害の際は最低保証を受けられる一方、満期保険金・解約返戻金は経済情勢の変化や金利変動、為替変動などの影響を受けます。これにより、払込保険料よりリターンが少なくなる可能性があり、保障と運用の両立ができる反面、投資に関しては元本を割り込むリスクがあることを認識しないといけません。評価損が発生すると即座に取り戻すことは難しく、長期的な運用を考えるべきです。
さまざまなコストがかかる
変額保険には契約時の初期費用や保険関係の費用、運用管理費用、特別勘定にかかる費用など、さまざまなコストがかかります。運用を保険会社に任せられますが、個人で株式や投資信託を運用する場合と比較すると、どうしても高くなりがちです。資産運用だけが目的なら、別で運用するほうが効果的な場合があります。考え方としては、死亡・高度障害保障が必要かどうかで、変額保険を契約するのか、それとも一般的な投資を選ぶか判断することです。いずれにしても、一連のコストは表面化しづらく、パンフレットなどで詳細を事前に確認しましょう。
途中解約時の返礼金が少ないケースも
変額保険は長期保有を前提とした設計の商品が多く、短期間で解約すると払込保険料に対して返戻金が大きく目減りしたり、ほとんどなかったりすることもあります。途中解約のリスクも考慮して、資金計画を立てましょう。
変額保険が向く人・向かない人
万が一の保障と運用を両立させたい
変額保険は、コストを負担しながらも万が一の保障と運用を両立させたい人に向いた保険商品です。保険会社に運用を任せられるので、運用先について調べる時間がない、手間をかけたくない、初心者なので自ら商品を選び運用する自信がないといった人にもぴったりです。
また、変額年金の運用は長期にわたるため、短期運用より安定した成果も期待できます。長期的ない資産形成を考えているなら、資産の一部を変額保険に振り分けるのも手です。
リスクを取りたくないなら避けること
変額保険は特別勘定の運用成績次第で、満期保険金や解約返戻金が払込保険料の合計額を下回る可能性があります。元本割れのリスクを取りたくないなら選ぶべきではなく、他の保険商品を選ぶべきです。また、そもそも保障を必要とせず、投資だけをしたい人にも変額保険は向いていません。ならば、証券会社で株式や投資信託を運用した方が、純粋にリターンを追求することができます。NISAなどのように投資利益が非課税になる制度もあり、これらの活用を検討しましょう。
まとめ
変額保険は保障と資産運用を同時に実現できる、ハイブリッド型の保険商品です。ただしインフレ対策や税制優遇といったメリットがある一方で、元本割れのリスクや諸経費、途中解約時の返戻金の低さなど、注意点も少なくありません。加入を検討する際は自身や家族のライフプランやリスク許容度と照らし合わせることです。商品設計が複雑なため、FPなど信頼できる専門家のアドバイスを受けながら比較検討しましょう。
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