万博バブルは本物か?――大阪市で始める不動産投資、地価と賃料の未来予測


2025年大阪・関西万博が真っただ中の大阪市。7月半ばで一般入場者数は1000万人を超えるほどの大盛況です。これに伴い会場の夢洲や大阪市中心部を中心に地価や不動産価格は上昇しており、不動産投資の対象エリアとしても注目を集めています。まさに万博バブルの様相を呈していますが、一方で開催後の反動や地価・賃料の下落を懸念する声も聞こえるようです。ここでは、大阪の不動産投資について、「今買うべきエリア」「万博後の動向」などについてデータを交えながら解説します。具体的な投資判断の材料として、ご一読ください。
大阪市の不動産投資が注目される理由
地価と人口動向――商業地+6.0%で全国トップクラスの伸び
大阪市が不動産投資先として注目を集めるのは、経済の活性化や大規模な都市開発、世界的なインバウンド需要の回復、これらを背景とした地価の上昇が挙げられます。これらの要素が複合的に作用し、魅力的な環境を生みだしているのです。
例えば地価。国土交通省の「令和6年都道府県地価調査」によると、大阪圏の商業地の地価は前年比6.0%と3年連続で上昇し、上昇幅は拡大。これは東京圏の平均変動率7.0%にも迫る勢いです。住宅地に関しても1.7%と、こちらも3年連続で上昇、上昇幅も伸びを見せました。
日本全体が少子高齢化・人口減少に直面する中、人口も堅調に推移しています。2025年6月1日現在の人口は約281万人で、5年前から約6万人も増加。都心部へのアクセスがよいエリアやビジネス・商業施設が充実したエリアでは若年層やビジネスパーソンの流入が継続し、自然減を上回っています。こういった人口動態は賃貸住宅の需要を下支えし、不動産の安定的な運用につながっています。
再開発・交通網の拡充
大阪市内では、大規模な再開発事業も進められてきました。大阪の玄関口である梅田エリアでは、2024年7月に「JPタワー大阪」がオープン。「グラングリーン大阪」の施設も、順次オープンを迎えています。なんばエリアでも2024年3月に「Osaka Metroなんばビル」が開業しました。2023年3月にはJR大阪駅で新地下ホームが開業し、2025年1月には大阪メトロ中央線のコスモスクエア~夢洲間も延伸開業。今後は北陸新幹線の新大阪駅までの延伸も控えています。これらの交通網の充実は利便性の向上だけではなく、周辺地域の不動産価値を中長期的に押し上げます。
インバウンド回復でホテル・民泊需要が増加
コロナ禍で一時的に落ち込んだものの、インバウンドも急速に回復しています。大阪市は歴史的な観光資源に加え、食文化やエンターテインメントが充実していることから人気で、大阪観光局の調べによると、2024年は前年比47%増の約1463万人。コロナ前の2019年も19%上回り、過去最高を更新しました。大阪市は国際空港である関西国際空港からのアクセスが良く、新幹線も乗り入れているので、世界各国から訪れやすい環境であることが要因の1つです。
インバウンドの増加に伴い、ホテルや民泊施設への需要も急増しています。とくに中心部の心斎橋やなんばエリアでは、顕著な収益改善が見られます。民泊も好調で、こうした宿泊需要は不動産投資戦略に大きな影響を与えそうです。
万博効果と地価の今後
開催前~開催中はベイエリアを中心に上昇基調
万博の開催前から万博開催中にかけては、夢洲を中心としたベイエリアの地価は上昇トレンドが継続すると考えられます。インフラ整備やアクセス道路の改良、関連施設の整備、万博に対する期待と堅調な来場者数、実需と投資の両面が地価を押し上げる要因です。投資家心理も旺盛であり、万博関連の施設に近いエリアや交通利便性の高いエリアは注目を集めやすく、この時期に保有することで短期的なキャピタルゲインが期待できます。
閉幕後のシナリオ――“小幅下落→横ばい”がメイン予測
万博閉幕後の地価については、専門家の間でもさまざまな見解が見られるものの、大方の予測は「小幅な下落から横ばいへの推移」です。いわゆる万博バブルが終焉を迎えることで開催中に高騰した一部エリアの地価は、一定の調整局面を迎える可能性がありますが、大幅な下落ではなく万博前の水準に収れんする、もしくは小幅な下落にとどまるという見方が大半を占めます。なぜなら、万博を契機に整備されたインフラや都市機能はそのまま残り、エリアの利便性や価値は中長期的に維持されるからです。IR(統合型リゾート)の誘致やその他の再開発も控えており、これらの事業が不動産市場を下支えするというわけです。仮に物件を保有していても短期的な値下がりを恐れて売却を急ぐより、賃料収入を得ながら長期保有を検討してもよいでしょう。
長期視点ではIR・MICE計画が下支え
万博後の成長エンジンとして期待されるのが、万博会場跡地で2030年に開業予定の夢洲IRです。IRにはカジノ、ホテル、MICE(国際的)などが整備される予定で、国内外の観光客の新たな集客施設として期待されています。IRが開業されると新たな雇用も生まれ、周辺地域の居住用不動産の賃貸需要も刺激され、国際会議や展示会が頻繁に開催されることで、ホテルやMICE関連施設の稼働率も高まります。万博による短期的なブームに終わらず、大阪市の不動産市場を長期的に下支えする強力な要因となり、不動産投資を検討する上でも注目すべき要素です。
投資リスクと対策
日銀の金融政策は利上げに向かっており、実施されると不動産投資ローンの返済額は上昇し、キャッシュフローが悪化する可能性があります。変動金利型を利用している場合は注意が必要です。また、一部エリアでは不動産価格が適正価格以上に高騰するバブル化のリスクも考慮しないといけません。高値掴みを避けるべく、市場の動向を見極め、利回りだけではなく周辺相場や物件の将来性、賃料の適正水準などを総合的に判断することです。
万博後の空室リスク
万博開催による一時的な宿泊・居住需要の高まりは、閉幕後に反動する可能性があります。特に単身者向けワンルームや民泊用途の物件は影響を受けやすく、閉幕後は需要が急減し空室リスクが高まります。安定した需要が見込まれるのはファミリー層や近隣で働く単身のビジネスパーソン向けの居住用賃貸物件ですから、ターゲット層向けの間取り、通勤利便性もよい物件を選ぶことが望ましいでしょう。
災害・老朽化リスク
大阪市には、南海トラフ地震による津波。浸水リスクを抱えています。ベイエリアではハザードマップを精査した上での投資判断が求められます。リスクが高いエリアの物件は保険料が高くなり、将来的な売却が難しくなるかもしれません。耐震性の観点からも旧耐震基準の物件は避ける、あるいは事前に耐震補強工事の必要性や費用を確かめることです。火災・地震保険への加入も不可欠となります。
まとめ
万博の開催は、大阪市の不動産市場に大きな期待感と活況をもたらしています。ただし、閉幕後には一時的な調整局面が訪れる可能性もあるため、長期的な視点で検討することが大切です。ポイントとしては、「資産性重視の都心×安定的なインカムゲインの郊外」でポートフォリオを組むこと。万博からIR開業・再開発の波に乗る戦略が成功のカギです。
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