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住宅ローン控除とふるさと納税を“ダブル活用”!
限度額・控除ロスを防いで節税効果を最大化する方法

2025.08.21 Thu

税金や社会保障費の負担増のニュースが増えるなか、節税への関心が高まっています。なかでも、ふるさと納税と住宅ローン控除は、どちらも所得税や住民税を控除できる制度として注目を集めています。一方で、「両制度併用できるのか?」「併用すると損をする」といった声もあるようです。ここでは、ふるさと納税と住宅ローン控除の制度を改めておさらいしたうえで、上手な活用法や注意点などについて解説します。正しい知識を身に付け、賢く節税しながら返礼品と税優遇のいいとこ取りを実現しましょう。

目次

ふるさと納税と住宅ローン控除――まずは制度をおさらい

ふるさと納税の仕組みと控除のプロセス 

ふるさと納税は、「ふるさと」という言葉が冠されていますが、出身地などに関係なく「応援したい自治体」に寄附をすることで、寄附額のうち2000円を超える部分を所得税と住民税から控除できる制度のこと。実質的には税金の先払いであり節税効果はありませんが、自治体から返礼品をもらえることが多く、その点でお得というわけです。

ふるさと納税で控除を受けるには、寄附した翌年の確定申告で寄付金控除を受ける必要があり、これにより所得税と住民税の両方から控除されることになります。所得税分はその年に収めた税金から還付され、住民税分は翌年の税額計算の際に控除が適用されます。なお、確定申告が不要な会社員などは、1年間の寄附先が5自治体内であれば、確定申告をせずに控除が受けられる「ワンストップ特例」を利用することもできます。

住宅ローン控除の仕組みと2024年-25年の最新枠

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを使いマイホームを購入・リフォームした場合に、年末のローン残高の一定割合が控除される制度です。計算された税額から直接控除額を差し引く「税額控除」であり、所得税から優先的に控除し、所得税で控除できない分は住民税から控除します。控除期間は新築住宅が13年、中古住宅は10年です。

制度は定期的に改正されており、2024年-25年であれば、長期優良住宅・低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅は年末のローン残高×0.7%を13年にわたり控除することができます。例えば、2024年に長期優良住宅に入居し13年後の2037年まで住宅ローン残高が4500万円以上残っているとしたら、1年間で控除できる金額の上限は4500万円×0.7%=31万5000円、13年間の合計は409万5000円です。なお、所得税で控除できない分は、前年度課税所得×5%(最大9万7500円)を条件に住民税から控除される仕組みです。

注意点として、2024年以降に新築住宅を購入する場合は、一定の省エネ性能基準を満たさないと住宅ローン控除の適用を受けられません。ただし、「2023年中に建築確認を受けている」「2024年6月30日以前に建築された」のどちらかに該当すれば、省エネ性能基準を満たさない「その他の住宅」であっても、借入限度額2000万円、控除期間10年で住宅ローン控除を利用することができます。住宅ローン控除は納めるべき税金からダイレクトに差し引かれるため、高い節税効果を得られるのが特徴です。活用しない手はありません。

併用はできるのか?――結論と基本ルール

なぜ併用OKなのか――所得税と住民税で“すみ分け”

「ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できるのか?」という疑問に対する答えは「できます」となります。それは、各制度が所得税と住民税という異なる税目に対して、異なる順番で控除を行うからです。具体的には、所得控除のひとつである寄附金控除に該当するふるさと納税が先で、その後に税額控除の住宅ローン控除が適用されるので、併用すること自体に問題はありません。

確定申告を選ぶと控除ロスが生じるケース

ただし、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用し確定申告を行うと、控除ロスを生じる可能性があります。というのは、ふるさと納税をして確定申告をすると、所得控除にふるさと納税の寄附金控除が含まれるため課税所得、その分所得税が減ります。従って、ふるさと納税の寄附金控除の分だけ、所得税から住宅ローン控除で節税できる金額が減るのです。さらに、所得税で控除しきれない金額は住民税から控除する仕組みですが、先述したようにその上限は9万7500円。控除額によっては、住民税から差し引けない分が発生する可能性が生じるのです。これが「控除ロス」の正体です。

控除ロスを防ぐ3つのポイント

ワンストップ特例を使えば原則的にロスは起きない

こうした控除ロスを防ぐには、先述したふるさと納税のワンストップ特例を活用することです。「確定申告が不要の給与所得者」「寄附先の自治体が1年間で5つ以内」といった条件を満たす必要はありますが、確定申告の手間をかけずふるさと納税の恩恵を得られ、住宅ローン控除との併用でも、メリットを発揮します。

それは、ワンストップ特例を活用する場合は確定申告と異なり、所得税から控除されず、全額が住民税から控除されるからです。所得控除に寄附金控除が含まれないため課税所得や所得税は減らず、住宅ローン控除で税額控除できる金額も変わりません。控除しきれない分は住民税から控除しますが、上限が設けられているので住民税がゼロになることは極めて少なく、残った住民税からふるさと納税の控除分が差し引かれます。結果、2つの制度のメリットを最大化することが可能です。

住宅ローン控除“初年度”はワンストップ特例が使えない

ただし、給与所得者が住宅ローン控除を受ける場合、年末調整を活用できるのは2年目以降で、初年度は確定申告をしないといけません。ワンストップ特例が利用できないので控除ロスが生じやすいため、住宅ローン控除で圧縮された後の所得税額を考慮して、ふるさと納税の寄附額を控えめにするのが賢明です。ふるさと納税関連のサイトには、住宅ローン控除を考慮した控除上限額を計算するツールが用意されているので、事前に正確な控除上限額を把握し、無理のない範囲で寄附しましょう。

住民税控除上限に注意すること

先述した通り、住宅ローン控除は所得税から控除しきれなかった分を住民税から控除する仕組みで、その上限は「住民税の所得割×5%(最大9万7500円)」です。ふるさと納税のワンストップ特例を利用した場合でも、住宅ローン控除が住民税控除上限に達すると、ふるさと納税分を控除しきれない可能性があるので、年収が高くて住宅ローン残高が大きい、控除額が最大となる住民ローン控除初年度は注意することです。

まとめ

ふるさと納税と住宅ローン控除の併用は、節税効果と返礼品のメリットを一挙両得できる手段です。ただし、確定申告かワンストップ特例かの選択で結果は大きく変わることは理解しておくことです。最もシンプルかつ効果的なのはワンストップ特例の活用ですが、住宅購入初年度は利用できません。いずれにしても、シミュレーションツールなどを使い、控除上限を超えない計画を立てることが大切です。

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