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賃料動向の最前線!第29回「全国賃料統計」(2024年9月末)から見えること

2025.09.30 Tue

日本不動産研究所が公表した第29回「全国賃料統計」(2024年9月末時点)は、オフィス・共同住宅の“足元の賃料トレンド”を定点観測したもの。全国の主要都市(オフィス76地点、共同住宅158地点)でモデル建物の新規賃料を査定し、指数化しています。今回は、直近の変化点と今後の見通しをコンパクトに整理します。

目次

全国賃料統計とは?最新動向を読む前に

1996年から続く定点調査

日本不動産研究所が毎年9月末に公表している「全国賃料統計」は、1996年に始まった長期調査です。

全国の主要都市を対象に、不動産鑑定士がモデル建物の新規賃料を査定し、指数化したもの。オフィスは76地点、共同住宅は158地点が調査対象となっており、日本の不動産賃料動向を定点的に把握できる数少ないデータとして注目されています。

オフィス賃料――東京圏が反転、全国平均も3年ぶりに上昇

東京都区部は▲0.5%から+1.6%へ大幅回復

オフィス賃料は全体でみると調査地点の6割以上が横ばいでしたが、東京都心の動きが鮮明でした。東京都区部は前年の▲0.5%から+1.6%へと大幅に上昇し、東京圏全体も3年連続の下落から上昇に転じています。

これが全国平均を押し上げ、3年ぶりに上昇へと転換しました。

大阪圏は上昇、名古屋圏は横ばい、地方も底堅く推移

都市圏別では、大阪圏も上昇に転じ、名古屋圏は横ばいにとどまりました。三大都市圏以外では上昇傾向が続いており、地方市場にも底堅さが見られます。

上昇22地点/下落5地点/横ばい49地点と改善基調

地点数でみると、前年に比べて上昇地点が7から22へ大幅増加。下落地点は12から5へ減少しました。横ばいは49地点で、全体的に市況改善の傾向が読み取れます。

共同住宅賃料――全国平均は4年連続で上昇

前年+0.8%から+1.1%へ伸びが拡大

共同住宅は調査地点の5割以上で横ばいながら、全国平均は前年の+0.8%から+1.1%へと上昇幅を拡大。賃料水準は底堅く、緩やかな上昇が続いています。

東京圏が+1.8%で最大の上昇、大阪圏も追随

都市圏別に見ると、東京圏が+1.8%と最も大きな上昇率を記録しました。大阪圏も上昇が続いており、首都圏と関西圏が全国の賃料を引き上げる構図が鮮明です。

上昇70地点/下落4地点/横ばい84地点に

地点数の内訳は、上昇70地点(前年49)、下落4地点(前年6)、横ばい84地点。上昇地点の拡大と下落地点の縮小が同時に進み、全国的に「底堅さ」が広がっています。

地域別の特徴――四国を除き横ばい~上昇

北海道地方はオフィスで上昇幅が最大

地方別の内訳を見ると、四国地方を除くすべての地域で横ばいまたは上昇。特に北海道地方はオフィス賃料の上昇幅が最も大きく、地方都市圏でも回復の兆しが見られました。

大都市圏の押し上げと地方の底堅さが共存

大都市圏が全国平均を押し上げる一方、地方では横ばいが中心。とはいえ下落地点は減少しており、地方市場でも底固い推移が確認できます。

2025年の見通し――小幅上昇が続く予想

オフィスは全国平均で+0.7%の上昇見込み

今後1年間の見通しでは、オフィス賃料指数は全国平均で+0.7%の上昇が予測されています。東京圏の反転上昇が引き続き全体を牽引すると見られます。

共同住宅は全国平均で+0.9%の上昇見込み

共同住宅は全国平均で+0.9%の上昇予想。東京圏や大阪圏の連続上昇が背景にあり、ファミリー層を中心に需要が堅調とみられています。

実務で押さえたいチェックポイント

エリア×タイプのミスマッチを避ける

全国平均が上昇しているといっても、物件タイプや立地で需給は大きく異なります。

単身向けかファミリー向けか、築浅か築古かによって状況は大きく変わるため、エリアとタイプのミスマッチを避けることが重要です。

“横ばい”の意味を読み解く

横ばいが続くエリアでは、裏側で賃料競争や条件調整が進んでいる可能性もあります。数字だけで安心せず、現場の実感を確認する姿勢が求められます。

短期見通しを戦略にどう織り込むか

賃料上昇の予測幅は+0.7~0.9%と小さいため、家賃収入の伸びよりも運営の精度が重要。修繕や募集のタイミング管理など、日常の運営戦略に直結させることがポイントです。

地域差の顕在化に備えたシナリオ作り

四国のように例外が残る地域では、賃料据え置きや条件緩和を想定した計画が必要です。地域差を織り込んだ戦略がリスク回避につながります。

不動産投資のポイントについては、下記の記事もあわせてご参照ください。

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まとめ

「静かな強さ」がにじむ最新市況

大都市圏が平均を押し上げる構図

東京都区部や東京圏全体の反転上昇、大阪圏の堅調な推移は、全国平均を押し上げる原動力となっています。

横ばい多数+上昇の広がりという緩やかな上昇局面

上昇地点の増加と下落地点の減少が同時に進み、全体は「横ばい多数+底堅い上昇」という穏やかな上昇局面にあります。

選別が成果を分ける時代へ

数字の平均値に安心せず、エリア・物件タイプの選別がますます重要になっています。最新統計が示すのは、全面的な上昇局面ではなく、静かに選別が進む時代の到来だといえるでしょう。

不動産投資の各エリアの動向について、詳しくは下記の記事もあわせてご参照ください。

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※出典:一般社団法人日本不動産研究所「第29回 全国賃料統計(2024年9月末現在)」

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