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投資を活用した節税対策とは?
効率的な投資法と節税効果

2025.05.16 Thu

近年、物価上昇と給与の伸び悩み、そして将来への経済的な不安から、「貯蓄から投資へ」という潮流が加速しています。株式、投資信託、不動産など、多様な投資手法は資産形成の有効な手段であると同時に、賢く活用することで税負担を軽減する節税対策にもなり得ます。本稿では、なぜ投資が節税につながるのか、その基本的な考え方から具体的な投資方法、そして各投資手段がもたらす節税効果と注意点について、詳細に解説します。

目次

投資と節税対策の基本

節税対策の基本的な考え

節税対策の根本的な考え方は、課税対象となる所得額を合法的に減らし、税負担を軽減することにあります。その手段として、収入から一定額を差し引く「控除」や、事業に必要な支出を「経費」として計上する方法が挙げられます。給与所得者は原則として経費計上が難しいものの、「給与所得控除」をはじめとする様々な所得控除を活用できます。

一方、資産を増やすための投資も、税制上の優遇措置を活用することで、資産形成と節税を両立させることが可能です。特に、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった制度は、株式や投資信託の運用において税制上のメリットが大きく、活用が推奨されます。また、不動産投資においては、減価償却などの仕組みを利用することで所得を圧縮し、節税効果が期待できます。投資には元本割れのリスクも伴いますが、適切な知識と制度の活用によって、資産を増やしながら税負担を軽減する有効な手段となり得るのです。

節税対策としての主要な投資方法

NISA(少額投資非課税制度)の活用

NISAは、個人の資産形成を後押しするために創設された制度であり、通常約20%課税される株式や投資信託の運用益が非課税になるという大きなメリットがあります。2024年には制度が刷新され、年間投資上限額が「成長投資枠」240万円と「つみたて投資枠」120万円の合計360万円、生涯投資上限額が1800万円(うち成長投資枠は1200万円まで)に拡大され、より柔軟な投資戦略が可能になりました。非課税保有期間は無期限であり、長期的な資産形成を目指す投資初心者から経験者まで、幅広く活用できる制度です。

つみたて投資枠は、少額からの長期・積立・分散投資に適した制度であり、金融庁が定めた基準を満たす低コストの投資信託などが対象となります。毎月一定額を積み立てる「ドルコスト平均法」を活用することで、価格変動のリスクを抑えながら長期的な資産形成が期待できます。運用益が非課税となるため、課税口座で運用した場合と比較して、手元に残る金額が大幅に増加します。例えば、毎月3万円を20年間、年利5%で運用した場合、通常の課税口座では約102万円の税金が引かれるのに対し、つみたてNISAでは513万円の運用益がそのまま手元に残るという試算からも、その節税効果の大きさが分かります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用

iDeCoは、公的年金に上乗せして老後資金を準備するための私的年金制度であり、その最大の魅力は手厚い税制優遇措置です。毎月の掛金は全額所得控除の対象となるため、所得税・住民税を軽減する効果があります。また、運用期間中の利益は非課税であり、60歳以降に一時金または年金として受け取る際にも、一定額まで税金が優遇されます。原則として60歳まで引き出しができないという制約はあるものの、長期的な視点で節税しながら老後資金を形成したい人にとっては非常に有効な制度です。掛金の上限額は職業や年金加入状況によって異なります。

不動産投資による節税効果

不動産投資は、安定的な家賃収入や将来的な売却益が期待できるだけでなく、「経費計上」「減価償却」「損益通算」といった税制上の優遇措置を活用することで、効果的な節税対策となります。不動産経営にかかる固定資産税、修繕費、管理費、ローン金利、火災保険料など、多岐にわたる費用を経費として計上することで、不動産所得を圧縮できます。

特に「減価償却」は、建物の価値の減少分を会計上の費用として計上できるため、実際の支出を伴わないにもかかわらず所得を減らす効果があります。建物の構造によって法定耐用年数が定められており、その期間にわたって減価償却費を計上できます。また、不動産所得が赤字になった場合には、その損失を給与所得などの他の所得と合算して、全体の課税所得を減らす「損益通算」も可能です。

投資信託や株式投資における節税

投資信託や株式投資で得た利益(分配金や譲渡益)には、通常約20%の税金がかかります。これらの税負担を軽減するためには、前述のNISAやiDeCoを優先的に活用することが賢明です。これらの制度を利用すれば、運用益が非課税となります。

株式投資においては「配当控除」という制度も存在します。これは、国内株式の配当金を総合課税として確定申告した場合に適用される税額控除であり、法人税が課税済みの配当金に対する二重課税を調整する目的があります。

さらに、株式投資で損失が発生した場合には、「損益通算」や「繰越控除」といった制度を活用することで節税が可能です。損益通算は、同じ年内の株式譲渡益や配当金と損失を相殺するものであり、繰越控除は、その年に控除しきれなかった損失を翌年以降3年間にわたって繰り越して、利益と相殺できる制度です。これらの制度を利用するためには、確定申告が必要となります。

節税対策における注意点

制度の仕組みやルールを理解すること

投資を活用した節税対策を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。まず、各制度の仕組みやルールを正確に理解することが不可欠です。NISAやiDeCoには投資上限額や非課税期間、引き出し制限などが存在し、不動産投資における経費計上や減価償却についても、税法上のルールを遵守する必要があります。不適切な会計処理は税務調査の対象となるリスクがあります。

また、投資の本来の目的は資産を増やすことであり、節税はあくまで副次的なメリットとして捉えるべきです。節税を意識するあまり、リスクの高い投資に手を出すなど、本末転倒な行動は避けるべきでしょう。自身の投資目標やリスク許容度を明確にした上で、適切な投資方法を選択し、税制優遇制度を賢く活用することが重要です。

さらに、税制は改正される可能性があるため、常に最新の情報を収集するように努める必要があります。必要に応じて、税理士などの専門家に相談することも有効な手段です。

まとめ

本稿では、投資が単なる資産形成の手段としてだけでなく、効果的な節税対策にもなり得ることを解説しました。NISAやiDeCoといった非課税制度、不動産投資における減価償却や損益通算、株式投資における配当控除や損失繰越など、様々な制度を理解し、自身の状況に合わせて適切に活用することで、税負担を軽減しながら効率的な資産形成が可能になります。しかし、制度の理解不足や過度な節税意識はリスクを伴うため、常に正しい知識を持ち、専門家のアドバイスも参考にしながら、賢く投資と節税の両立を目指しましょう。

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