2026年度税制改正大綱は“ここ”に注目!――不動産・相続・資産運用のポイントを総まとめ
毎年12月になると、翌年度以降の国の税制の方針や具体的な改正内容をまとめた「税制改正大綱」が公表されます。2026年度に向けた文書も間もなく明らかになりますが、どういった改正案が盛り込まれるのでしょうか。
本記事では、不動産や相続、資産運用など、私たちの日常生活に関連するマネー関連のトピックを紹介します。
※なお、記事執筆時点で2026年度税制改正大綱は発表されておらず、検討内容を中心にまとめています。詳細は公表された情報をお確かめください。
2026年度税制改正大綱の注目ポイントは?
不動産を活用した節税スキームを問題視
毎年12月に政府・与党が発表する税制改正大綱は、翌年度以降に税制の方向性を決定づける重要な文書です。
その骨子となる「令和8年度税制改正要望」には多くの意見が寄せられており、2026年度の税制改正大綱では、相続税や不動産評価、資産運用など個人に関する項目も多く含まれそうです。
なぜ、こういった税制改正に注目が集まるのでしょうか。それは、政府が目指す「資産の再配分」と「公平性の確保」という政策目標に関わるからです。
例えば、これまでの税制では不動産など特定の資産やスキームを利用することで、富裕層が相続税の評価を大幅に引き下げられる「合法的な節税術」が存在しています。
しかし、政府・税務当局はこれらの手法が税負担の公平性を損なっていると見ており、是正に乗り出す姿勢を示しています。
節税を目的とした不動産の活用にメス!
相続前の投資用マンション購入に対する評価を変更
不動産関連の税制改正で挙げられるのは、一棟賃貸マンションの購入や不動産小口化商品を活用した相続対策に関する規制強化です。
一般的に、現金をそのまま相続するより不動産に換えた方が相続税評価額を下げられ、節税につながるとされています。その際も評価額を圧縮するスキームが広く利用されている状況です。
国税庁は過剰な節税に対しては、財産評価基本通達総則6項に基づく課税処分を行っていますが、近年は適用件数が増加。これに関する裁判も増えています。
有名なのは、「令和4年最⾼裁判決」。これは、被相続人が節税目的で銀行から10.1億円を借り入れ、相続税開始直前に一棟マンションおよび分譲マンション合計を13.8億円で購入したというもの。
これに伴い、相続人らが各不動産を評価通達に基づき合計3.3億円と評価したうえで、取得にかかる借入金残高を債務控除し、相続税を0円(2.4億円減額)として申告しました。
国税庁はこれを不当とし裁判に発展したところ、「著しく不適当」と認められる特別な事情がある場合には、通達に寄らない評価方法も許容されると最高裁は判断し、国税側の訴えを適法とし納税者側の訴えを棄却しました。
こうした事例を通じて、区分所有マンションの評価適正化を目的とした「マンション通達」が新設されましたが、一棟マンションを活用した節税スキームは散見されており、個別に対応せざるを得ない状況が続いています。
政府・与党は重く受け止め、賃貸を目的に購入したマンションやオフィスビルなどの相続税を算定する際の物件評価方法を改める方針です。
現時点では、相続の直前に買われた物件について、現行の路線価ではなく購入時の価格に基づき評価し、税負担を引き上げるとしています。
不動産を使った節税については、「どこまでが認められ、どこからが問題視されるのか」を正しく理解しておく必要があります。
参照:「節税と脱税の違いとは? 法的な境界線と正しい節税対策を解説」
不動産小口化商品の贈与も問題視
不動産小口化商品を活用した贈与も問題視されています。
政府の会合では、3000万円で購入した商品を、半年後に9歳の孫に取得価格の6分の1となる480万円で贈与。受贈者は通達に基づく480万円と評価し、その後市場価格で売買し、取得価額とほぼ同じ額で現金化した事例を挙げています。
路線価で計算して贈与した場合は正しい金額ですが、租税回避行為と指摘されてもおかしくありません。今後は、こういった相続税の節税対策にも規制が入る可能性があります。
節税効果だけを目的に商品を選ぶと、思わぬリスクを抱えることもあるため、注意が必要です。
参照:「不動産投資はリスクしかない?利益を上げるための注意点5選」
投資家・生活者が押えておくべき対応策は?
不動産投資戦略の見直し!
都市部を中心に路線価と市場価格の乖離が目立ち、この差は相続税節税の温床となります。
高騰した市街地の商業地・住宅地を中心に評価方法の調整や、エリア別の路線価の補正など、相続税評価額の再検討が行われるでしょう。
従来は現金から不動産への組み換えが相続税対策の鉄板でしたが、今後は不動産だけではなく金融資産、法人、生前贈与などを組み合わせた対策を検討しないといけません。
とりわけ、不動産に偏重した手法だと税負担が重くなるなど、影響を見極める必要がありそうです。
そもそも、なぜ現在これほどまでに不動産価格が上がっているのかを把握しておくことも重要です。
参照:「なぜ不動産はこんなに高い? 価格が上がる理由と今後の見通し」
相続対策スケジュールの前倒し!
国は、相続直前の不動産購入=あからさまな相続税対策を問題視しています。
長期的な視点で相続税対策に乗り出す、暦年課税を活用した計画的な贈与を早期から始める、生命保険を活用するなど、相続対策スケジュールを前倒しにし、多様な方法で進めることが効果的かつ適法な対策になります。
不動産以外も含めた、現実的な相続・節税対策を整理しておくことが大切です。
参照:「年収500万円でもできる税金対策とは? 効果的な方法とポイントを徹底解説」
専門家との連携強化!
税制改正の内容は複雑であり、税理士や弁護士などの専門家によっても見解が分かれることもあります。
改正が施行されるまでの間も、新たな解釈の通達や法関連の整備が進むため、最新情報をキャッチアップし続けることが大切です。
特に資産規模が大きい投資家や資産家は、税制改正の議論の段階から専門家と連携し、資産構成や投資戦略に与える影響をシミュレーションし、迅速に対応策を練ることが重要です。
個人に影響を与えそうな税制改正は?
住宅ローン減税は中古住宅への支援を拡充
個人の資産形成に影響を与えそうな税制改正についても取り上げていきましょう。
まずは住宅ローン減税について。政府・与党は改正案を明らかにしており、その柱は購入者が増えている中古住宅への支援拡充です。
減税対象となるローンの限度額を最大3000万円から4500万円に引き上げたうえで、適用期間を10年から13年に延長します。また、制度自体も2025年度で終了だったところ、5年間延長します。
住宅ローン減税の仕組みや改正内容は、事前に整理して理解しておきたいところです。
参照:「住宅ローン控除とは? 2025年度の改正内容を徹底解説」
未成年を対象とした「こどもNISA」を創設
国民の資産形成の定番と化したNISA(小額投資非課税制度)も拡充する方針です。
具体的には投資信託を定期的に積み立てる「つみたて投資枠」を18歳未満に解禁。「こどもNISA」として、0歳から始められるようにします。
実質的には親が子ども用の口座を開き、家庭の年収格差を考慮のうえ年間60万円、総額600万円まで投資できるようにします。
ただし、引き出しが可能になるのは12歳から。これは「こどもNISA」が子育て世代の支援が目的であり、運用で増えた資金を学費などに充てることを想定しているためです。
早ければ2027年から始まるとされています。
あわせて、NISA制度全体の基本も押さえておくと理解しやすくなります。
参照:「新NISAとは? 制度の仕組みからメリット・注意点まで初心者にもわかりやすく解説」
ふるさと納税の控除額に上限
応援したい自治体に寄附をし、返礼品を受け取れるふるさと納税。政府・与党は納税により受けられる税金の控除額に上限を設ける調整に入りました。
現行では寄附額のうち2000円を超える分を所得税・住民税から差し引きますが、高所得者優遇との不安があり、制度のゆがみを是正するのが狙いとされています。
2026年度税制改正大綱に具体的な上限額や開始時期など詳細を盛り込む予定です。
暗号資産の所得に分離課税を適用
現状、ビットコインをはじめとする暗号資産の所得に対しては、課税率が最大で55%になる総合課税を適用していますが、金額に関係なく一律で20%の税を課す分離課税が適用される見通しです。
株式や投資信託など他の金融商品と同じ扱いにし、税負担を減らすことで市場の活性化を後押しします。
まとめ――個人の資産に関する内容が数多く盛り込まれる方針
このように、2026年度の税制改正大綱には、個人の資産形成や税負担に関する改正案が多く盛り込まれる方針と予測されます。
税負担の公平性や資産運用の後押しなどが背景にあり、多くの人にも関わること。情報をしっかり受け止め、はやめに対策することをおすすめします。
税制改正をきっかけに、あらためて自分の資産形成の方向性を見直してみるのも一つの選択です。
参照:「ゼロからはじめる不動産投資!初心者でも失敗しない資産形成のコツ」
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