働く30代の資産形成に役立つ
情報発信メディア

相続税は怖くない! 不動産を活用した節税対策と成功事例 

2025.03.31 Thu

相続税は資産を次世代に引き継ぐ際の大きな負担となることがありますが、不動産を上手に活用することで節税効果を得ることができます。この記事では、不動産を使った相続税の節税対策について、具体的な活用術や注意点を紹介します。これからの相続対策に役立つ実践的なアドバイスをお届けしますので、早めの準備を始めるための参考にしてください。

目次

不動産を活用した相続税対策の基本

不動産を相続対策に活用する理由

資産リッチな方にとって、相続税対策を通じた節税は興味深いトピックです。そもそも相続税とは、被相続人の遺産(相続財産)を相続する際にかかる税金で、遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」を超えると課税の対象になり、法定相続分の取得金額に応じて、10~55%の税率が課せられます。よって、相続財産の評価額を圧縮すればするほど節税につながり、その方法の1つとして有効なのが不動産なのです。

なぜかというと、現預金など他の資産と評価方法は異なるからです。例えば、現金1億円を1人で相続した場合は時価で評価され、課税対象は6,400万円(1億円-基礎控除3,600万円)。対して不動産の場合は時価で評価されず、結果的に資産の圧縮につながります。また、現金の一部を不動産に換えておくことで、資産分散の効果も期待できます。

不動産の評価方法と相続税への影響

相続時において不動産は、土地は原則として「路線価方式」もしくは「倍率方式」、建物は「固定資産税評価額」を用いて、相続税評価額を算出します。

路線価とは、道路に面している標準的な宅地1㎡あたりの価格のことで、国税庁が毎年7月に1月1日時点の価格を公表しています。路線価方式では「路線価×土地の㎡数」で相続税評価額を算出します。一方、倍率方式は都市郊外など路線価が定められていない地域における評価方法のこと。その年の固定資産税評価額に、一定の倍率を乗じて算出します。ただし、路線価方式・倍率方式ともに、評価額は市場価格の80%程度になるのが一般的です。つまり、総額1億円の不動産を買ったとして、土地が4,000万円だとしたら、相続税評価額は約3,200万円になります。

建物の評価に用いる固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する際に基準とする価格のことで、市場価格の70%とされるのが一般的です。先の例に当てはめると、総額1億円の不動産で建物が6,000万円だとすると、4,200万円が固定資産税評価額となります。

このように、同じ1億円でも現金のままだと時価で評価されますが、不動産にすれば土地と建物で7,400万円ほどの評価額になり、相続財産評価額の圧縮、引いては相続税率の引き下げにつながる可能性があるのです。

不動産を使った節税対策の具体例

小規模宅地等の特例を利用する方法

不動産が相続税対策に効果的な方法だとわかりましたが、「小規模宅地の特例」を適用するとさらなる節税が期待できます。
小規模宅地等の特例とは、自宅の敷地など一定の要件を満たす土地であれば特例の適用を受けることで、相続税評価額を最大80%減額できる制度のことです。高額な税負担により自宅を手放さなければならない事態を回避し、配偶者や同居の子どもなど遺族が自宅に住み続けられることを目的に創設されました。
事例を交えながら理解を深めましょう。まず、被相続人の自宅敷地は「特定居住用宅地等」と呼び、限度面積330㎡までの土地の評価額は80%減額されます。その際の相続税評価額は路線価を基に算出します。

例えば、路線価40万円、面積330㎡の土地の場合、小規模宅地等の特例の適用を受けるか否かで、評価額は次のように変わります。

特例の適用なし:40万円×330㎡=1億3,200万円
特例の適用あり:40万円×330㎡=1億3,200万円
        1億3,200万円×(1-0.8)=2,640万円

法定相続人が1人で他に財産がない場合、小規模宅地等の特例を受けないと課税遺産総額は9,600万円にものぼります。対して小規模宅地等の特例を受けると、土地の評価額は基礎控除内に収まるのでので、相続税は発生しません。
アパートやマンションなど賃貸事業を営んでいる場合も、小規模宅地等の特例の適用は可能です。賃貸用の土地は「貸付事業用宅地等」といい、一定要件を満たすと限度面積200㎡までの土地の評価額を50%減額できます。
例えば、路線価40万円、面積200㎡の土地の場合、小規模宅地等の特例の適用を受けるかどうかで、評価額は次のように変わります。

特例の適用なし:40万円×200㎡=8,000万円
特例の適用あり:40万円×200㎡=8,000万円
        8,000万円×(1-0.5)=4,000万円

小規模宅地等の特例を受けないと課税遺産総額は4,400万円ですが、小規模宅地等の特例を受けると400万円になります。
ただし、親族や知人に低額で貸し付けていた、入居者を募集しないで長期にわたる空室がある場合は、特例の適用を受けられない可能性があります。また、相続開始前3年以内に購入した賃貸物件、新たに貸付用不動産として貸し付けたものも同様です。相続税の申告期限まで土地を貸し付けていることも適用の要件となります。
なお、小規模宅地等の特例の適用は、要件を満たしていれば自動的に適用される制度ではありません。相続時に所轄税務署への申告が必要です。

賃貸物件で相続税を減額する方法

賃貸業を営んでいる場合は、借地借家法の規定により所有者の自由な使用収益が妨げられることになり、相続税評価の減額が適用されます。
まずは土地について。賃貸物件の土地は「貸家建付地」と呼ばれ、相続税評価額は「評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で算出します。借地権割合は地域により30~90%で定められており、路線価で確認することが可能です。

借家権割合は全国で一律30%と決まっており、賃貸割合は実際に貸し出している面積の割合を指します。建物の相続税評価額は「固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」で算出します。総額1億円(土地6,000万円、建物4,000万円)のアパートで、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%を例にすると、相続税評価額は次のようになります。

■土地の路線価
6,000万円×80%=4,800万円
■土地の貸家建付地評価
4,800万円×(1-借地権割合60%×借家権割合30%×賃貸割合100%)=3,936万円

■建物の固定資産税評価額
4,000万円×70%=2,800万円
■建物の貸家評価
2,800万円×(1-借家権割合30%×賃貸割合100%)=1,960万円

■相続税評価額合計
3,936万円+1,960万円=5,896万円

ただし、土地に関しては小規模宅地等の特例による評価減も適用されるので相続税評価額はさらに下がり、融資を受けて建てておりローン残債があればその分も差し引かれます。時価で評価されるよりも、賃貸物件にすることで大幅に相続税評価額は下がり、相続税の節税につながることがわかります。

不動産節税対策を行う際の注意点例

生前贈与も含めた不動産を購入するためのタイミングとそのリスク

不動産を活用することで相続税対策となり、節税が期待できることがわかりました。ただし、居住用であれ賃貸事業であれ、現金を不動産にすることで手元のキャッシュは減ります。融資を活用すれば毎月ローンを返済しないといけません。しかも、賃貸物件は入居者がいないと賃料収入が得られず、手出しとなる恐れがあります。

また、不動産を購入するタイミングも考えないといけません。なぜなら、生前贈与を受けた7年前以内に贈与者が亡くなった場合、その生前贈与はなかったとみなされ、相続財産に加算され相続税の課税対象になるからです。

その際に加算される金額は、相続時の時価ではなく、贈与時の時価となります。相続税逃れを目的に、相続人が亡くなる直前に行われる駆け込み的な贈与を防止するのが目的です。よって、将来の相続を見越して不動産は早めに買い、長期保有することが求められます。生前贈与を検討する場合は、計画的に進めましょう。

節税対策として不動産を活用する際の税務上の注意点

税務上のルールや法改正にも注意が必要です。例えば、将来値上がりしそうな不動産は、その前に生前贈与しておくと、相続税の節税につながる可能性があります。ただし、基礎控除110万円と控除額を差し引いた課税価格に対して、贈与税の税率は10~55%かかります。場合によっては相続時に対応したほうが節税になるケースもあるので、深く検討することです。

また、相続人が土地を取得すると、「土地の課税標準額(固定資産税評価額)×3%」の不動産取得税や名義変更時にかかる登録免許税も発生します。こういった手続きは司法書士や税理士など専門家に依頼するのが一般的で、依頼費用もかかります。

不動産は分割できず、複数の相続人が共有すると保有し続けるか売却するかなどで、親族間の争いに発展する恐れもあります。こういった事態を回避するため生前贈与しておくと安心です。その際は、他の相続人にはどういった財産を分与するのか、あらかじめ決めておくことです。複数の不動産を所有する場合も、誰にどれを贈与・相続するか考え、不公平感がないようにしておきましょう。

相続に関する法律は定期的に改正・施行されます。例えば、1戸当たりの土地の相続税評価額が低くなる傾向があり、高層階ほど購入価格と相続税評価額の差が大きく、小規模宅地等の特例が適用されるケースが多いことから、タワーマンションを活用した節税は注目の相続税対策でした。

ところが、国税庁は公平な租税評価を確保する観点から、タワーマンションを含む居住用区分不動産の評価を見直すことに。2024年1月以降は高層階の評価額は引き上げられました。いつ法改正が行われるかタイミングはわかりませんが、公平性を損なう手法は正される可能性があります。

相続税を理解して正しく節税しよう!

不動産を使った相続対策をスムーズに進めるには、相続税に対する理解を深めないといけません。知識がなく適切に手続を進めないと節税にならないこともあります。早くから学び始め、対策を練っていくことです。ただし、税制を理解するには専門的な知識が求められることも事実です。不安がある場合は、不動産会社や税理士など、その道のプロフェッショナルに相談するようにしましょう。

RANKING アクセスランキング

RECOMMEND おすすめの記事