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サラリーマンが合同会社を使い節税する方法とは?会社設立のメリットや活用法

2025.05.16 Thu

企業による副業解禁やサラリーマンによる不動産投資が加速するなか、節税を目的とした合同会社を設立する動きが顕著になっています。なぜ、法人を持つと節税になるのでしょうか。ここでは合同会社の概要や立ち上げるメリットや注意点について解説します。

目次

合同会社とは?

合同会社の仕組みとメリット・デメリット

合同会社は、出資者と経営者が原則として同一であり、出資者全員が有限責任を負う会社形態です。2006年5月の会社法改正によって新たに設けられた比較的新しい会社形態で、アメリカのLimited Liability Company(LLC)をモデルとしています。2023年には設立数が11.5万件を超え、新規法人の約3割を占めるほどの人気です。

合同会社のメリット、デメリット・注意点をまとめると以下のようになります。

【メリット】

設立コストと時間の抑制:約6万円で設立可能。株式会社よりも手続きが簡単で迅速

経営の自由度

出資者=経営者であるため、迅速な意思決定が可能

役員任期

決算公告義務なし:ランニングコスト削減に有利

節税効果

経費計上の幅広さや役員報酬による所得分散で節税可能
将来の株式会社への移行可能

【デメリット・注意点】

信用度が低め

株式会社よりも認知度が劣る

資金調達が困難

株式発行不可、融資・補助金が主な資金源

資金調達が困難

株式発行不可、融資・補助金が主な資金源

出資者間の対立リスク

意思決定が難航する可能性あり

事業承継の困難さ

社員全員の同意が必要など柔軟性に欠ける

合同会社と株式会社の違い

合同会社と株式会社の違いを比較すると、下図のようになります。

合同会社 株式会社
意思決定 1人1票の議決権のもと、総社員の同意 所有株式数に応じた議決権
経営者と出資者 一致 分離
出資者責任 間接有限責任 間接有限責任
役員の任期 任期なし 最長10年
代表者の名称 代表社員 代表取締役
決算公告 不要 必要
定款 認証不要 認証必要
(最低3万円)
利益配分 定款で自由に規定 出資比率に応じる
設立費用 約10万円~ 約25万円~

(引用:https://corporate.ai-con.lawyer/articles/llc-basic/18/

どちらも同じ法人ですが、合同会社は、経営と所有が一致し、迅速な経営判断が可能な一方、株式会社は出資者(株主)と経営者(取締役)が分離されており、ガバナンスや資金調達面で優れています。合同会社はシンプルな構成で運営コストが低く、副業や小規模ビジネスに向いています。

サラリーマンが合同会社を活用する理由

副業収入の管理と節税

なぜ、合同会社を設立するのか。それは副業や投資が大いに関係しています。というのも、副業による事業所得や不動産投資による不動産所得などがある場合、個人の所得税より合同会社の法人税を適用したほうが節税につながる可能性があるからです。

所得税の税率

所得税は累進税率のため、課税所得が増えるほど税率は高くなり、最大で45%。また、2037年までの各年の確定申告において、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税率の2.1%)を併せて申告・納付します。
課税所得が年800万円以下の部分は15%、年800万円を超える部分が23.20%です。ここからわかるのは、個人の所得税よりも法人税のほうが節税になる所得額があるということです。例えば、課税所得が900万円のケースで考えましょう。

課税所得が900万円の場合

個人事業主:900万円×33%-15万3600円=143万4000円
合同会社:(800万円×15%)+(100万円×23.20%)=143万2000円

わずかではあるものの、法人税のほうが節税効果を得られるのです。

合同会社を活用した節税の実践

節税が期待できる事業の規模

合同会社を設立すれば節税効果が期待できますが、誰にでも当てはまるわけではありません。目安として、事業所得や不動産所得の課税所得が1000万円を超えるあたりから法人化によるメリットが見込まれます。所得や経費の扱いも関係するため、法人化を検討する際は税理士に相談しましょう。

そして、法人化することで認められる経費は幅広く、広告費・交際費・役員報酬・保険料などが対象になります。個人事業では生活費との線引きが曖昧で否認されることもありますが、法人は事業に関する支出なら原則的に経費計上が可能です。

ただし、経費扱いできる範囲が広いとはいえ、何でも計上するのはおすすめできません。ポイントとしては「常識の範囲内」「事業との関連性を税務署に説明できる」であること。節税が目的化し、本来であれば認められないものも経費扱いにしてはいけません。仮に税務調査に入られると領収書や口座などが調べられ、取引先にも調査が及ぶと信用問題に発展します。経費として落とせるかどうか迷うなら、税務署や税理士に相談しましょう。

サラリーマンの仕事と並行して合同会社を運営するには

合同会社の設立後の注意点

合同会社を設立するには、出資者の実印や印鑑証明書、銀行口座、出資金、法人の実印、登記するための住所が必要です。そして、事業内容など会社基本情報を決め、法人用の実印作成、定款の作成、出資金の払い込み、必要書類の作成、法務局に登記書類を提出といった手順で設立していきます。

設立後の運営で注意したいのは、本業の会社に法人設立や事業をしているのがバレることです。お酒の席で同僚や部下にうっかり口外したり、儲かったからといって身なりを派手にしたりすると疑われるかもしれません。

合同会社から役員報酬を受け取ると社会保険の加入義務が生じ、本業と合同会社の2社で社会保険に加入すると、年金事務所から本業の会社に通知が届きます。これにより、法人設立が知られるケースも後を絶ちません。これを防ぐには、合同会社からの役員報酬をゼロにすることです。あるいは、家族に役員報酬を支払えば、本業の会社に通知は届きません。

合同会社設立によるメリットは人それぞれ

法人の設立には費用と手間がかかる

株式会社に比べるとローコストとはいえ、合同会社の設立にも最低6万円の登録免許税などの費用は掛かります。設立後も地代家賃や通信費、水道光熱費など、固定費も発生します。事業を維持するためのランニングコストは削るのが難しく、一方でこれらの支出を覚悟しないと事業は継続できません。売上と支出のバランスを取りながら経営のかじ取りに迫られることも忘れないことです。

また、個人事業主の確定申告と比べて、合同会社の確定申告や決算作業は大変です。役員報酬を受け取る場合は、所得税の確定申告も必要となります。本業と並行して行うのは厳しく、報酬を支払う必要はありますが税理士に依頼するのが無難でしょう。

必ずしも節税できるとは限らない

合同会社を設立したからといって、節税メリットを必ず享受できるとは限りません。課税所得や役員報酬の金額、計上できる経費の範囲によって変わります事前にシミュレーションを行い、高い節税効果が期待できるなら合同会社を設立すべきです。
個人事業主が赤字の場合は所得税や住民税は発生しませんが、合同会社は赤字でも法人住民税の均等割を納めないといけません。解散する場合も、解散登記と清算人の選任登記の手続きのために、3万9000円の登録免許税がかかります。辞める時にもお金が必要となることを覚えておきましょう。

まとめ

いかがでしたか。本稿を通じて合同会社を設立するメリットやデメリット・注意点が理解できたと思います。サラリーマンの間で副業や不動産投資が珍しくなくなったいま、事業として本格的に育てたい、規模を拡大したいと考え、加えて節税効果も得たいのであれば、設立を検討しましょう。その際は税理士が強い味方になってくれるので、進んで相談することです。

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