太陽光発電の売電収入はこう申告する!
10kWの壁・必要経費・節税テクニックを徹底解説


近年は再生可能エネルギーの普及に伴い、太陽光パネルを設置する家庭や個人事業主が増えています。その際に売電収入がある場合は、収入と支出を税務上どのように扱うか理解することが重要で、発電容量や収入額によって確定申告の義務が生じることもあります。ここでは、太陽光発電の売電収入の扱い方について、わかりやすく解説します。
太陽光発電で確定申告が必要となる条件
住宅用(10kW未満)か産業用(10kW以上)かを確かめる
最初に確認すべきは、設置した太陽光発電システムの発電容量です。一般的に発電容量が10kW(キロワット)未満の設備は「住宅用」、10kW以上は「産業用」として区分され、それぞれで買取価格や買取期間が異なります。
住宅用は自家消費を目的として設置するものであり、余剰電力を10年間にわたり電力会社に売却することができます。この場合、売電収入から経費を差し引いた年間所得が20万円を超えない限り確定申告は不要です。ただし、年間の給与収入が2000万円以上の会社員は勤務先で年末調整がされないため、個人で確定申告が必要となります。副業で売電以外に収入があり、合計所得が20万円を超えた場合も同様です。
一方、個人事業主として太陽光発電を行い売電収入が事業所得に該当する場合は、売電収入以外の他の事業収入を合算した所得が年間38万円を超えた場合に確定申告が必要です。これは、38万円の基礎控除額を超えるためです。
産業用は発電した電力の全量を売電する「全量買取制度」の対象で、買取期間は20年です。一般家庭に設置される設備であっても発電容量が10kW以上であれば産業用となります。売電収入による所得が20万円を超えるケースも多く、該当するなら確定申告をしなければなりません。個人事業主が事業として行う場合も、産業用であれば売電による所得が基礎控除を超えて所得税がかかることが多く、確定申告の対象となります。
所得区分――雑所得か事業所得、不動産所得かを判断するポイント
雑所得になる場合
太陽光発電による売電収入が確定申告の対象となる場合、その所得は10種類の所得区分の中から、「雑所得」「事業所得」「不動産所得」のいずれかに区分されます。どの区分に該当するかによって経費の計上方法や課税対象額の計算方法が異なるので、どれに該当するか正確に判断しないといけません。
雑所得は、給与所得や事業所得など他の9種類に分類されない所得区分のことです。例えば、会社員などが自宅の屋根にソーラーパネルを設置して太陽光発電を行う場合、売電収入は雑所得になります。必要な経費を差し引いた後の金額が課税対象で、先述したように年間20万円未満の場合は確定申告の義務は生じません。
事業所得になる場合
継続的に行い対価を得ている、10kW以上の設備を複数所有している、年間所得が20万円を超えている、売電収入が生活の柱になっているなど、個人や法人が太陽光発電を本格的に事業として営んでいる場合、その所得は事業所得と見なされます。個人が普段の生活の範囲で売電をしても事業所得となりませんが、スケールが大きくなると事業性を伴うと判断されるのです。よって、会社員が副業して太陽光発電を行う場合も、事業所得に該当することがあります。
事業所得に該当する場合は、38万円を超える所得があれば確定申告の対象です。事業所得となれば青色申告が可能となり、最大で65万円の特別控除を受けられるほか、家族への給与支払い(専従者給与)なども経費とて計上できます。赤字が出たら他の所得との損益通算も認められており、税制面で有利です。
不動産所得になる場合
不動産所得とは、土地・建物の貸し付けから得られる収入のことです。例えば、賃貸アパートの屋根や屋上に太陽光発電設備を設置し、発電した電力を共用部分で使用、余剰電力を売却して売電収入を得た場合は不動産所得と見なされます。
ただし、不動産所得になるのは、賃貸経営など不動産業務と太陽光発電の関連性が認められる場合のみです。賃貸物件の屋上で発電した電力を使用せず全量販売している場合は、雑所得や事業所得に該当します。発電した電力の使用方法や、電力が賃貸物件とどう関連しているかで、どの所得区分になるか決まるのです。なお、不動産所得になった場合も青色申告が可能です。
太陽光発電に課せられる税金
所得税
すでに述べた通り、売電により得た所得には所得税が課せられます。雑所得・事業所得・不動産所得いずれの区分であっても、収入から必要経費を差し引いた金額が課税対象です。年間20万円以上であれば確定申告を通じて、所得に応じた税率で税金が計算されます。一方、所得が年間20万円以下の場合、給与所得者であれば確定申告の必要はありません。
固定資産税
固定資産税は設備、土地、家屋に課される税金で、課税標準額に1.4%の税率をかけて算出します。太陽光発電設備を家の屋根や土地に設置すると償却資産と見なされ、固定資産税の課税対象になることがあります。例えば、発電容量が10kW以上の産業用であれば固定資産税の対象で、10kW未満の住宅でも法人や個人事業主が使用していると同様です。一方、個人が10kW未満の住宅用太陽光発電を行う場合は償却資産に該当せず、固定資産税もかかりません。
ただし、住宅のやめにソーラーパネルを設置する際、屋根と一体となり取り外しができない場合は住宅の一部と見なされ、発電容量に関係なく固定資産税の対象となります。
太陽光発電に認められる経費の代表例
減価償却費
税務上の利益を正確に計算するのは、認められる経費を把握しておくことです。その1つが減価償却費です。太陽光発電は高額な固定資産であり、費用を一度に計上することはできません。17年の法定耐用年数に応じて分割し、毎年一定額を経費計上する仕組みです。
固定資産税
固定資産の課税対象になった場合は、「評定額×標準税率1.4%」で税額を計算します。なお、固定資産税や設置のための購入した土地の固定資産税は経費として計上可能です。納税通知書や領収書を保管しておき、確定申告時に正確な金額を記載しましょう。
メンテナンス費用
義務的な法定点検、任意の点検や修理、部品交換の費用などが該当します。専用の保険料や通信費なども含まれます。
その他の諸経費
太陽光発電設備は高額なため、ローンを使い導入するケースがほとんどです。その際、支払った利息は経費扱いとなり、設備を設置する土地の賃貸料、損害保険料、遠隔システムの管理費、パワーコンディショナーの電力費用なども認められています。発電と関連する支出は該当するので、領収書などは保管しておくことです。
まとめ
太陽光発電により得られる売電収入は、発電容量や利用目的により税務上の扱いが大きく異なります。しっかり理解した上で、対象になった場合はすみやかに申告を行うことです、制度や税制について知り、計画を練って取り組むと安定的な副収入になるでしょう。
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