コインランドリー投資で失敗しないために――典型的な落とし穴・収支シミュレーション・回避策を徹底ガイド


「布団などを洗いたい」「自宅で深夜に洗濯機を回したくない」といった理由から、コインランドリーを使う人が増えています。こういったニーズに対して、コインランドリーのオーナーになり利益を得る「コインランドリー投資」にチャレンジする人もいるようです。ただし、思うような収益を上げられず、撤退に追い込まれるケースも多いようで…。ここでは、コインランドリー投資で失敗する理由、その対策について解説します。
なぜコインランドリー投資は失敗しやすいのか
高額な初期投資と資金回収期間の長さ
コインランドリー投資の初期費用は、洗濯乾燥機をはじめとする機械の設置で1000万~2000万円、内装・外装工事に500万~1000万円というのが一般的です。少なくとも2000万円がかかり、土地から始める場合はさらに数千万円を投じることとなり、1億円近い投資になる可能性もあります。
一方、売上は中~大規模の店舗で月50万~70万円前後、小規模店舗なら月30万~40万円といったところ。広告宣伝費や水道光熱費・清掃費用・機械のメンテナンス費用などランニングコストがかかるので、キャッシュフローはさらに減ります。資金回収には5年~8年程度かかることを覚悟しないといけません。また、仮に好立地で店舗をオープンしたとしても最初の1~2年は認知度が低く、収益は上がりづらく赤字経営になる可能性もあります。これに耐えられず撤退するオーナーが後を絶ちません。
立地産業ゆえに場所選びを外すと致命的
コインランドリー投資でもっとも重要なポイントは「立地」です。最適な立地を選ぶと集客に困らずリピーターの獲得につながりますが、そうでないと閑古鳥が鳴き、取り返しがつかないことになります。
不動産投資と同じく「需要」を捉えないといけません。周辺の人口や単身者・共働き世帯の割合などの世帯構成、車の通行量や近隣の駐車場の有無、競合店舗の数や稼働状況を確かめた上で出店場所を選ぶことです。これらを精査しないまま店舗を出しても利用者は集まらず、ランニングコストがかかるだけ、競合がある地域では価格競争に巻き込まれたり、広告宣伝費の負担が重くなったりするケースもあるでしょう。
住宅地から離れているなどアクセスが悪いと、ニーズがあっても利用されにくくなります。自家用車の保有率が低い都心部では住宅地にあると便利ですし、車社会の地方だと多少離れていても需要をつかめるでしょうが、駐車場の完備などが求められます。
無人経営の難しさとトラブルリスク
「無人で経営できる」「人件費がかからない」という点がコインランドリー投資の魅力として語られますが、実際には異なります。日々利用される洗濯乾燥機や店舗内はホコリやゴミで汚れやすく、繁盛店であればなおさらのこと。清掃を怠ると使用感や臭い、ゴミの散乱などで評判が落ち、SNSなどで拡散されると客離れを加速させます。無人のコインランドリーであっても定期的な清掃は必須です。
「いつも汚い」「機械が壊れている」「使い方がわからない」「洗濯物が放置されている」「両替できない」などの不十分な管理も客足を遠のかせます。無人では即時対応が難しく、かといって常駐スタッフを雇うと人件費がかかり収益性は低下することに。遠隔で対応する仕組みなど、低コストでできるソリューションを導入すべきです。
無人かつ24時間営業のコインランドリーの場合、深夜に酔客や不審者のたまり場になるリスクもあります。定期的な巡回、監視カメラの設置などの対策が求められます。
コインランドリー投資に失敗しないための方法
リサーチ・シミュレーションを徹底する
コインランドリー投資は、一度出店すると黒字になるまで時間がかかり、場所が悪いからと言って簡単に移転できるビジネスではありません。腰を据えて取り組む必要があるからこそ、出店前のリサーチやシミュレーションが必要不可欠です。まずは現地調査を行い、周辺住民の世帯構成や生活パターン、洗濯ニーズ、競合店の出店具合や混雑状況などをチェックしましょう。その際は行政の人口・統計データや地元の不動産店の情報も活用すると、よりリアルな分析が可能です。例えば、自治体のホームページには町名ごとの人口、世帯数、年齢構成といった詳細データが公開されていたり、まちの特徴が紹介されていたりすることも。インターネットでも「町名 住み心地」などで検索すると、ヒントになる情報が見つかります。不動産店では分譲・賃貸物件の情報があるので、どういった層に人気のエリアなのかわかるでしょう。
リサーチで得た情報をもとに、収支のシミュレーションも行います。想定売上と必要な客数、設備の稼働率、毎月の固定費・変動費、ローンの返済、キャッシュフロー、資金回収期間について複数の検証を行い、確度の高い結果をもとに店舗を作るのです。近年は電気代・ガス代の高騰が深刻で、この点を見誤るとキャッシュフローが少なくなったり、場合によってはマイナスになったりするケースもあります。金融機関から変動金利で融資を受けた場合は、金利の引き上げで返済負担が増すことも考えられます。専門的な知識も必要なので、1人で考えるのが難しい場合はプロフェッショナルの力も借りましょう。
差別化を図る
コインランドリーの洗濯乾燥機はメーカーごとで性能差は少なく、差別化が難しいビジネスです。価格面での差別化は収益を圧迫するリスクもあります。ただし、大型乾燥機やシューズ専用洗濯機など特殊設備の導入、カフェ・キッズスペースの併設、女性専用スペースの確保、スマートフォンアプリによる空き状況確認や決済機能の導入などの工夫で、他との差をつけることはできます。折込チラシなど広告に力を入れるのもよいでしょう。目立つ看板を掲げるなど、存在感をアピールすることも大切です。ただの洗濯場ではなく、また来たくなる場所にすることで、リピーターの獲得につながります。
無人店舗である以上、防犯対策は欠かせません。最近のコインランドリーは女性の利用客も多く、清潔さだけではなく、盗難の被害を受けない、不審者に接触しないといった安全性も気にします。防犯カメラの設置や明るい照明の設置、外から見えやすい店舗づくり、定期的な巡回、警備会社との連携といった施策が考えられます。
夜間の治安に不安があるエリアでは、営業時間を制限する、人件費はかかりますがスタッフが常駐する時間帯を設けるといった方法もあるでしょう。トラブルを未然に防ぐことで利用者の安心感は高まり、新規客・リピーターの獲得につながります。
まとめ
コインランドリー投資は、安定したニーズ、無人で手軽に始められるといったイメージがありますが、実際には高額投資で立地に左右されるビジネスです。失敗事例が多いからこそ、立地の収益性や資金計画と回収シミュレーション、運営体制の構築と差別化、防犯対策の徹底を可視化し、取り組むことです。特に初めて挑戦する人は、実績のあるフランチャイズや専門業者と組み、サポートを受けながら始めるのが現実的です。楽して儲かるビジネスではないからこそ、綿密な準備や堅実な経営判断をもとに始めましょう。
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