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老後の貯金が不安?――平均貯蓄額・必要資金・今からできる備えを完全ガイド

2025.07.11 Thu

定年を迎えた後は退職金や年金で悠々自適なセカンドライフを過ごすというのは、昔の話。現在は長寿化や少子化、不透明な年金制度の先行き、老後2000万円問題など、老後の暮らしに対して不安を覚えるニュースが後を絶ちません。ここでは、私たちの生活の中に起きている課題と解決策について詳しく解説します。

目次

老後のお金にまつわる3大不安

「老後 2000 万円問題」と少子高齢化

2019 年に金融庁の「市場ワーキング・グループ」が公表した「高齢社会における資産形成・管理」に関する報告書。老後の夫婦での生活資金は公的年金だけでは足りず、20年で約1300万円、30年で約2000万円が別に必要という内容は「老後2000万円問題」として注目を集めました。

年金の支給開始年齢の引き上げも、老後不安を煽っています。2000 年に行われた法改正で、老齢厚生年金の支給開始年齢は60歳から65歳へ段階的に引き上げられることに。男性は1961年4月2日以降、女性は1966年4月2日以降生まれの場合、65歳が受給開始年齢となりました。今後はさらに繰り下げる動きもあり、「年金は受け取れるのか?」といった疑いを持つ人は増えています。

年金制度の変化の背景にあるのは、少子高齢化です。日本の年金制度は現役世代が高齢者を支える賦課方式で成り立っており、かつては高齢者1人に対して3~4人の現役世代が支える構図でしたが、現在は約1.8人まで減り、今後はさらに厳しくなる見通しです。構造的な問題により年金の給付水準は抑制され、生活費を年金で賄うのは厳しいと考えられるようになったのです。

平均寿命の延伸と“長生きリスク”

厚生労働省の「簡易生命表(令和5年)」によると、日本人の平均寿命は男性で約81歳、女性で約87歳です。これに加えて、自立した生活が送れる「健康寿命」も延びており、「人生100年時代」は現実味を帯びてきました。

長寿化は一見すると喜ばしい話ですが、経済的にはリスクとなります。仮に毎月の生活費が夫婦2人の年金受給額が23万円あったとしても、支出との差が3万円あるとしたら、3万円×12か月×30年=1080万円の備えが必要です。

ちなみに、総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」(2024年)によると、60~69歳の世帯の純貯蓄額は2389万円です。このくらいあると、日常生活や趣味・旅行なども楽しめるでしょうが、退職金(企業年金)の支給額は減っており、公的年金についてはすでに述べた通り。今後は現役時代の蓄えや資産運用が不十分なまま高齢期を迎えると、資金が底をつく可能性は否定できません。

医療・介護費の高騰とインフレ

長寿化に伴い医療や介護関連の支出も増える傾向にあります。公的医療保険制度により、医療費の自己負担割合は一定に抑えられていますが、長期入院や高額な治療・薬剤、さらに介護施設の利用などが重なると、月の数万円~十数万円の出費になることも珍しくはありません。

日本は高齢化の影響を受け医療費・介護費は増大を続けており、公的制度で賄える状況ではありません。今後は団塊の世代が後期高齢者になることで医療・介護需要はさらに高まり、いまのような手厚い補償を今後も受けられるとは限らないでしょう。健康リスクに金銭面で備えておくことも肝心です。

さらに忘れてならないのはインフレの影響です。仮に2%のインフレが30年間続くと、今の100万円は実質的に55万円程度の価値になります。預貯金に頼るだけでは価値の目減りを避けられず、計画通りにためておいたのに足りなくなるという事態に直面するかもしれません。

今からできる貯金・資産運用術5選

NISA で非課税投資を実践

老後の資金難を回避するには、現役世代のうちから計画的に貯蓄・資産運用を実践することです。ここでは、初心者でも始めやすい5つの手段を紹介します。

まずは、NISA(小額投資非課税制度)です。これは、年間最大360万円(つみたて投資枠・成長投資枠)の範囲内であれば非課税投資ができるというもので、運用益に税金は課せられません。生涯の投資枠も1800万円(そのうち成長投資枠が1200万円)と大きく、老後の資金作りとして効果的でしょう。

なかでも、つみたて投資枠は、金融庁が認定した長期・積立・分散に適した投資信託が対象で、投資の初心者でも始めやすいのが特徴です。毎月数千円~数万円程度の積立から始め20年~30年と継続すれば、老後の大きな資産形成につながります。

iDeCoで掛金全額所得控除+運用益非課税

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分自身で運用する金融商品を選んだうえで掛金を拠出し、老後のために運用する私的年金制度の1つです。あくまでも年金づくりのための制度なので、原則的に60歳になるまでは資産を引き出せませんが、強制力が働くからこそ老後の資産作りとして効果的とされています。

最大の特徴は、毎月の掛け金が全額所得控除の対象になることです。拠出限度額は働き方や加入している公的年金等で変わりますが、その分だけ課税所得が減り、所得税・住民税の節税につながります。さらに運用中の利益も非課税で、受取時は「退職所得控除」や「公的年金等控除」が適用されるなど、拠出時・運用時・受取時の3重の税優遇を受けられます。老後を見据えた長期運用に最適な仕組みといえるでしょう。

企業型DC・財形貯蓄をフル活用する

会社員であれば、勤務先が企業型DC(企業型確定拠出年金)を提供していることもあります。基本的な仕組みはiDeCoと同じですが、企業が掛金を拠出するので資金負担が軽くなり、加入者が掛け金を上乗せできる「マッチング拠出」の制度もあります。加入者掛金は給与から天引きされ、全額が所得控除の対象になるのもメリットです。運用益は非課税、受取時に税制優遇も受けられます。

企業が従業員の福利厚生として導入する財形貯蓄も活用すべき制度です。給与から天引きして自動的に貯蓄することができ、目的に応じて一般財形、財形年金、住宅財形の3種類があります。いずれも一定の条件を満たすと利子が非課税になり、財形年金は老後の年金づくりのための制度です。確実に貯蓄できるので、計画的な資産形成に向いています。

投資信託の自動積立で長期分散投資

NISAやiDeCoには投資上限があるので、それを超えた資産運用をする場合は、証券会社が提供する投資信託の積立サービスを活用しましょう。毎月100円程度から始められ、株式や債券・不動産などを組み合わせた商品を一定額で買い付けることで、リスクを押さえた長期の資産形成が実現します。

定期預金・個人向け国債など“安全資産”で元本保全

株式や投資信託を使った運用は元本割れのリスクを伴います。大きなリスクを取りたくない、絶対に失いたくないお金については定期貯金や個人向け国債など、元本が保証される金融商品で運用することです。特に個人向け国債は最適金利0.05%が保証されており、インフレ時には利率が上昇する可能性もあります。ただし、預金を含めリターンは低いため、他の運用商品とバランスを取りながら活用することです。

NISAについてより詳しく知りたい方は下記もチェック!

NISAに関する無料小冊子はこちら:始める前に知っておきたい! 意外と知らない! 新NISAの落とし穴

まとめ

老後のお金に関する不安は、貯蓄額と必要資金のギャップを把握し、不足分を早期に試算の上、解決策に取り組むのが効果的です。NISAやiDeCoといった税制優遇のある制度を上手に活用し、資産をためて殖やす仕組みを作りましょう。

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