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「年金が足りない?」老後資金への不安を解消する完全ガイド――制度のリアルと“いまから備える”資産形成術 

2025.07.25 Fri

日本の高齢化と少子化が急速に進む中、老後の生活、特に年金制度に対する不安が広がっています。「年金は本当にもらえるのか?」「果たして年金だけで生活できるのか?」といった疑問や疑念は、社会全体の大きな課題です。ここでは、日本の年金制度の現状と将来の見通しを掘り下げながら、老後の不安を解消するための具体的な資産形成術を徹底解説します。

目次

なぜ「年金がもらえないかも」と感じるのか?

少子高齢化・財政悪化が与える影響

日本の年金制度は、大きく分けて国が管理・運営する「公的年金」(国民年金・厚生年金)と、これに上乗せする形で任意で加入する「私的年金」(国民年金基金・iDeCoなど)があります。公的年金制度の最大の特徴は、現役世代(20歳~64歳)の保険料で高齢者の年金を賄う「賦課方式」を採用している点です。

しかし、この賦課方式は、少子高齢化の進行によってその持続が年々厳しくなっています。たとえば、1960年には1人の高齢者の生活を約11人の現役世代が支えていましたが、2025年にはわずか1.8人にまで減少。さらに40年後の2065年には1.3人で支える見通しです。このような状況下では、現役世代の保険料負担が増えるか、年金給付額が抑制されるか、あるいはその両方が避けられません。

平均受給額の推移

実際のところ、現役世代の負担は増しています。国民年金の月額保険料であれば、平成初期までは1万円以下だったのが右肩上がりを描くようになり、2025年度は1万7510円になりました。

一方、年金はどれくらい受け取れるのでしょうか。基本的には、年金の受給額は、65歳以降に保険料を納めた期間に比例して決定される国民年金の老齢基礎年金と、厚生年金加入者の場合は、過去の報酬と加入期間に比例して老齢基礎年金に上乗せされる老齢厚生年金で構成されます。

日本年金機構によると、2025年度の国民年金受給額は満額で月6万9,308円、厚生年金は月23万2,784円(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)とされています。しかし、これはあくまで「標準的な年金額」であり、実際の受給額は収入や納付期間、配偶者の有無といった個々の条件によって大きく異なります。



■60歳~64歳

国民年金:月4万4836円 厚生年金:月7万5945円



■65歳~69歳

国民年金:月5万9331円 厚生年金:月14万7428円



■70歳~74歳

国民年金:月5万8421円 厚生年金:月14万4520円



■75歳~79歳

国民年金:月5万7580円 厚生年金:月14万7936円



■80歳~84歳

国民年金:月5万7045円 厚生年金:月15万5635円



■85歳~89歳

国民年金:月5万7336円 厚生年金:月16万2348円



■90歳以上

国民年金:月5万3621円 厚生年金:月16万0721円

※上記は1人分の受給額で、厚生年金保険(第1号)の平均年金月額には基礎年金月額も含みます。

今後の見通しについては、厚生労働省が5年ごとに実施する「財政検証」が参考になります。2024年の財政検証では、将来の年金給付水準について複数のシナリオが提示されており、経済成長が継続すれば年金額は増加する可能性がある一方で、過去30年間の経済状況が続けば年金額が徐々に減少する予測も示されています。あくまで予測ですが、最悪の事態に備えておくのが賢明でしょう。

ケース 年金額
2024年度 2029年度 基礎年金調整終了年度 2060年度
成長型経済移行・継続 現役男子の手取り収入 37.0万円 38.2万円 41.6万円 58.6万円
年金合計額 22.6万円 23.0万円 24.0万円 33.8万円
老齢厚生年金(夫) 9.2万円 9.5万円 10.4万円 14.6万円
老齢基礎年金(夫婦) 13.4万円 13.5万円 13.6万円 19.1万円
過去30年投影 現役男子の手取り収入 37.0万円 37.0万円 41.8万円 42.5万円
年金合計額 22.6万円 22.3万円 21.1万円 21.4万円
老齢厚生年金(夫) 9.2万円 9.2万円 10.4万円 10.6万円
老齢基礎年金(夫婦) 13.4万円 13.1万円 10.7万円 10.8万円
・基礎年金の調整終了年度は、「成長型経済移行・継続」ケースは2037年度、「過去30年投影」ケースは2057年度。
・厚生年金の調整終了年度は、「成長型経済移行・継続」ケースは2025年度、「過去30年投影」ケースは2026年度。
(出所)厚生労働省「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」(2024年7月3日)より筆者作成

「老後資金2,000万円問題」と平均生活費のギャップ

年金不安に拍車をかけたのが、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告に端を発した「老後資金2,000万円問題」です。これは、総務省の家計調査報告書(2017年)に基づき、夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみ無職世帯が老後を暮らすには、年金だけでは毎月約5万5000円が不足し、30年間で約2000万円の資金が必要になるというものです。この試算により、「年金だけでは暮らせない」という認識が広く浸透しました。

年金ネットで将来受給額をチェックする方法

年金不安を減らすための第一歩は、自分自身の年金受給見込み額を把握しておくことです。毎年誕生日月に届く「ねんきん定期便」やインターネット上で受給見込みや簡単な試算や詳細な条件で将来のシミュレーションができる「ねんきんネット」は便利なツールなので、定期的にチェックしましょう。

老後に必要な“備え”はいくら?3ステップで逆算

ステップ1:必要生活費を算出(固定費+変動費+介護費)

年金だけで老後の暮らしが不安なら、今のうちから自分にはどれだけの備えが必要なのか知っておくことです。まずは、以下の支出項目を参考に、老後の生活費を具体的に見積もりましょう。

・固定費(家賃または住宅ローン、光熱費、通信費、保険料など)
・変動費(食費、交際費、被服費など)
・医療、介護費

例えば月25万円だとすると年間で300万円。30年で9000万円です。

ステップ2:公的年金でカバーできる金額を差し引く

必要な生活費がわかれば、公的年金でカバーできる金額を差し引きます。この差額が、自分で準備すべき具体的な不足額です。先ほどの例になぞらえると、年金受給額が月20万円の夫婦世帯であれば、年間で240万円の収入。1年間で60万円、30年間で1800万円が足りません。

ステップ3:不足額を「積立年数×運用利回り」で割り戻す

最終的に算出された不足額を、老後までの「積立年数」と「期待される運用利回り」で割り戻すことで、毎月いくら積み立てれば目標を達成できるかが見えてきます。

例えば、40歳の人が65歳までに1,800万円を準備する場合、積立期間は25年間です。年利3%で運用することを前提とすると、毎月約4万円を積み立てる必要があります。このように具体的な数字を出すことで、漠然とした不安を解消し、現実的な資産形成計画を立てることができます。

年金不安を減らす6つの資産形成術

iDeCo・つみたてNISAで税制優遇を最大活用

年金不安を軽減するには、自身で資産を形成することに尽きます。具体的な普段として挙げられるのが、iDeCoやNISAです。ともに税制優遇が大きな魅力で、iDeCoは掛金が全額所得控除となり、所得税・住民税の負担が軽くなります。どちらの制度も運用益が非課税となります。はやめに始めることで複利効果も得られ、非課税メリットも長期にわたります。

定期預金・個人向け国債で元本を守る“安全資産”

リスクを抑えた資産形成としては、定期預金や個人向け国債が挙げられます。これらには元本保証があり、個人向け国債なら最低金利保障、預金にも保険制度による保護もあるため、資産の安全な置き場として活用することです。

投資信託の積立で長期分散投資を実践

NISAの「つみたて投資枠」や証券会社が提供する投資信託の積立投資は、運用の初心者でも始めやすい方法です。少額から取り組むことができ、毎月自動で買い付けるため、ドルコスト平均法による購入価格の平準化といった効果も期待できます。

企業年金・確定拠出年金をフル活用

勤務先に企業年金制度や企業型確定拠出年金(企業型DC)が用意されている場合は、積極的に活用しましょう。企業型DCは、会社が掛金を拠出してくれ、自身で上乗せできるマッチング拠出が可能なケースもあります。

収益用不動産を保有し家賃収入を得る

収益用不動産の所有=不動産投資も有効な選択肢です。最大の魅力は、物件を賃貸することで、毎月安定した家賃収入を得られること。公的年金に加えた「第2の年金」のようなもので、老後の生活費をカバーする収入源となりえます。立地さえ間違えなければ空室リスクを軽減でき、管理を専門の管理会社に任せると、手間がかからないのもメリットです。また、物価が上昇するインフレ局面だと現預金の価値は目減りするところ、実物資産の不動産は物件価格や家賃も上昇する傾向があり、インフレヘッジにも役立ちます。金融機関の融資を受ける際は団体信用生命保険に加入することが多く、契約者に万が一のことが起きてもローンの残債は完済されるので、残された家族も安心でしょう。減価償却費やローン金利、管理費などの諸費用は経費として計上できるので、節税効果も期待できます。

70歳就業&副業で「働きながら受け取る」選択肢

資産形成と並行して、働き方戦略も老後の不安解消に大きく貢献します。現在は、継続雇用制度の普及などにより、定年後も働き続けられる選択肢が広がっています。例えば、70歳まで就業し 収入を確保しながら、公的年金の繰り下げ受給を選択すると、年金額は最大で84%も増額されます(65歳からの繰り下げで75歳受給開始の場合)。

まとめ

少子高齢化と財政にひっ迫により、老後の暮らしを公的年金だけに頼る時代は終わりを迎えつつあります。しかし、不安に対する備えは今からでも遅くはなく、自身の受給額の把握+金融商品を使った積極的な運用+預金や個人向け国債による資産の確保+働き方戦略を組み合わせることで、老後の生活設計に対する不安は軽減されます。何より、収益用不動産の所有は公的年金に加えた収入源の確保につながり、ゆとりのある老後を送るための基盤になるでしょう。さっそく取り組んでください。

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