管理組合トラブルはこう防ぐ!よくあるトラブルとその防ぎ方


分譲マンションの区分所有者で構成される、管理組合。物件の資産価値を維持・向上させるために欠かせない組織ですが、異なる価値観を持つ人々が集まるため、多くのトラブルが発生しているのが現状です。ここでは管理組合でトラブルが多発する理由を解き明かし、具体的な対処法を解説します。この記事を通じて管理組合のスムーズな運営方法を知り、安心で快適なマンションライフを送りましょう。
なぜ管理組合ではトラブルが多発するのか
国交省調査「70%の組合が直近1年で何らかのトラブル」
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、前回調査に比べると特にトラブルがないマンションは23.2%から16%に減少しており、何らかのトラブルを抱えるマンションが増えました。なかでも居住者間のマナーをめぐるトラブルは60.5%ともっとも高く、他にも建物の不具合、管理組合の運営、費用負担など、内容は多岐にわたります。マンションを巡るトラブルは、多くの管理組合が直面している普遍的な課題といえるでしょう。
規約の未整備・合意形成の難しさ・資金計画の甘さが要因
トラブルが発生する主な要因は、以下の3点に集約されます。
1つは「規約の未整備」です。例えば、共用部の利用ルールや騒音に関する具体的な基準を管理規約や使用細則に定めていないと、トラブルが発生した時に解決の糸口が見つけられません。
「合意形成の難しさ」も挙げられます。管理組合の意思決定は総会や理事会を通じて行われますが、区分所有者全員の意見をまとめるのは容易ではありません。マンションの規模が大きくなるほど多様な生活背景や価値観が衝突し、議論が長期化する傾向があります。
「資金計画の甘さ」もトラブルの要因です。修繕積立金や共用施設維持費の見積もりが甘いと資金不足が早期に露呈しますが、修繕積立金の引き上げや一時金の徴収など、金銭的な負担を伴う課題では、意見の対立が深刻になりがちです。
よくあるトラブル7大ケースと対処方法
ここからは、マンションでよく見られるトラブルを7つに絞り、管理組合が取るべき対処方法を解説します。
生活音・騒音(家電・子ども・ペット・床)
テレビや楽器、子どもが走り回る音、ペットの鳴き声、洗濯機や掃除機の稼働音など、生活音・騒音はマンションでもっとも身近なトラブルの1つです。
対処方法
1.管理組合が間に入り、双方から事情をヒアリング
2.防音マットの設置・時間帯のルール化などを提案
3.継続する場合は管理規約や細則に反映させる
違法駐車・共用部への私物放置
来客や居住者が契約していない場所に違法駐車したり、エントランスや廊下などに私物を放置したりするのも、お馴染みのトラブルです。
対処方法
1.規約や細則に罰則規定を明記する
2.警告書の掲示・防犯カメラの設置
3.長期放置物は一定手続きを経て撤去するなど毅然とした対応を徹底
水漏れ事故
専有部分から階下への水漏れは多大な損害を与え、修繕費用も高額になる可能性があるため、迅速な対応が求められます。
対処方法
1.管理会社や専門業者に依頼して原因を迅速に特定
2.原因が専有部分なら個人の火災保険、共用部なら管理組合が加入している保険で修繕。責任の所在を明確にし、修繕費用の負担割合を決める
3.原因が共用部にあるなら、管理組合が主体となり再発防止のための工事計画を立てて実施
理事会役員のなり手がいない
高齢化や共働きによる多忙を理由に、役員のなり手不足が深刻化しています。役員不足は管理組合の運営を停滞させ、マンションの資産価値低下につながる恐れがあります。
対処方法
1.立候補だけではなく住民同士で理事候補を推薦する制度を導入し、役員選出のハードルを下げる
2.マンション管理士など外部専門家を登用する
3.報酬制度を導入し役員就任のインセンティブを付与する
理事間の対立・職務放棄
理事会内で意見が対立したり、特定の理事が職務を放棄したりすることも、管理組合運営を機能不全に陥らせます。
対処方法
1.理事会の内容を議事録として公開し透明性を確保する
2.理事会が機能不全に陥った場合は運営を外部専門家に委託する「第三者管理方式」へ移行
3.職務放棄が続く場合は、管理規約に基づき解任の手続きを進める
修繕積立金不足で一時金徴収
大規模修繕の際に積立金が不足し、多額の一時金を請求する事態は、住民の大きな不満とトラブルに発展します。
対処方法
1.専門家を交えて長期修繕計画を現実的な費用で見直す
2.見直した計画やデータに基づいた客観的な根拠を示しながら住民に説明する
3.修繕積立金の段階的な引き上げを総会で決議
駐車場収支赤字で管理費倍増
マンションによっては駐車場の利用低下により維持費が赤字化し、不足分を管理費で補填するため値上げを余儀なくされるケースもあります。
対処方法
1.周辺相場を調査し、駐車場の利用料金を現実的な価格に改定することを検討
2.空き駐車場がある場合は、外部への貸し出しを検討し収益を増やす
3.EVの普及を見据え充電設備を設置、住民向けのカーシェアサービスを導入する
トラブルを拡大させない3ステップ
早期発見――アンケート・アプリで“声”を吸い上げ
トラブルが発生してしまった場合でも、その対応次第で問題を早期に解決し、深刻な対立へと発展するのを防ぐことができます。
まず、トラブルの兆候を早期に発見するためには、日ごろから住民の声を吸い上げることが効果的です。定期的にアンケート調査を実施し、生活上の不満や要望を把握しましょう。マンション専用の掲示板やアプリ、SNSなどを活用し、住民が気軽に意見を交換できる場も設けると、小さな不満が噴出する前に、兆候を察知できます。
事実確認と専門家(管理会社・管理士)の活用
トラブルが発生したら感情的にならず、冷静に事実を確認することです。管理組合が当事者双方から意見を聞き、客観的な事実を整理する、法的な問題や技術的な問題が絡むなら、管理会社やマンション管理士、弁護士など専門家の知見を借りることで、より公平かつスムーズな解決が期待できます。
管理規約・使用細則の定期的な見直し
トラブルが発生する原因の多くは、不明確なルールが関係しています。時代や社会の変化に合わせて管理規約や使用細則を定期的にアップデートすることが重要です。例えば、近年増えているペット飼育や騒音、オンラインデリバリーサービスの利用など、新たな生活様式に対応したルールを策定することで、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。
まとめ
マンションの管理組合トラブルは、生活、理事会、資金という3つの領域に集中しています。未然に防ぎ、あるいは拡大させず解決するためには、早期発見→第三者活用→規約・計画のアップデートの3ステップが鉄則となります。そして、「自分たちの資産価値を守る」という共通のゴールを掲げ、透明性の高い運営とデータに基づく意思決定こそが、トラブルを未然に防ぐ最大の武器になります。
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