止まらない“不動産投資”営業電話――番号流出のカラクリと合法撃退マニュアル


「不動産投資に興味はありませんか?」――見知らぬ電話番号から着信があったと思えば、不動産投資の営業電話だった。こんな経験をした人は少なくありません。なぜ、これほどまでにかかってくるのでしょうか。その背後には、私たちの電話番号が流出するカラクリと、法令違反を平然と行う一部の悪質業者の存在があります。ここでは、止まらない営業電話の原因から、合法的に撃退する方法について解説します。
そもそも“営業電話地獄”はなぜ起きる?
営業パーソン1成約=数千件架電という超低成約ビジネスの実態
不動産投資の営業電話は、一度番号が知られると繰り返しかかってくる厄介な存在です。こうした「営業電話地獄」とも呼ぶべき状況は、特定のターゲットに大量の電話をかけることで、わずかな成約につなげる、不動産投資業界の特殊なビジネスモデルに起因しています。
そもそも、不動産投資の営業電話は、1件の成約を獲得するためには数千件の架電が必要だと言われるほどの超低成約率が前提のビジネスです。営業パーソンには1日200コールといった過酷なノルマが課せられることもあり、膨大な架電数とノルマが、相手の迷惑を顧みない執拗な勧誘や、強引な手法を誘発させる最大の要因となっています。
電話番号が知られる3つのルート
なぜ、面識のない不動産投資会社に電話番号が知られているのでしょうか。主な入手ルートは以下の3つです。
1.名簿業者から購入
名簿業者は転職サイトの登録情報、街頭アンケート、ウェブサイトの資料請求などで得た個人情報をリスト化し、不動産投資会社に販売しています。
2.会社HP・SNSなど公開情報をスクレイピング
ウェブサイトやSNSなどに公開されている情報を自動的に収集するプログラム=スクレイピングを使い、個人の電話番号やメールアドレスを取得するケースもあります。
3.ターミナル駅でアンケートや名刺交換
駅前などで見かける「資産運用に関するアンケート」や名刺交換で渡した名刺なども、営業リスト作成の貴重な情報源です。
4.末尾を順番にずらす“総当たり”コール
電話番号の末尾を順番にずらしながら無作為に電話をかける「総当たり方式」で、営業電話をかける業者もいます。
若手ビジネスパーソンが狙われる理由――ローン審査の緩和と“話しやすさ”
営業電話のターゲットになりやすいのは、若手のビジネスパーソン、なかでも公務員や大手企業勤務者です。というのも、安定した収入があり将来の返済能力が高いので、不動産投資ローンを組みやすいと金融機関から評価されるからです。また、資産運用に慣れていない若手はベテラン投資家に比べて知識が浅く、営業パーソンからしても「丸め込みやすい」と見なされがちです。
宅建業法が定める“6大迷惑勧誘”チェックリスト
不動産投資の営業電話には、宅地建物取引業法(宅建業法)という法律が適用され、ここでは消費者が不当な勧誘から身を守るためのルールが定められています。代表的な違法行為は以下の6つです。
社名・目的を名乗らない
電話勧誘を行う業者は、必ず最初に「社名」「担当者名」「勧誘の目的」を明確に告げないといけません。
「必ず儲かる」といった断定的な表現
不動産投資には空室リスクや金利上昇リスクなど、利益が保証されるわけではない不確実性があります。「必ず儲かります」「絶対に値上がりします」といった断定的な表現で勧誘することも違法行為です。
深夜・早朝(21時~8時)の着信
迷惑となる時間帯の勧誘も禁止されており、具体的には21時~翌朝8時までの間に着信があった場合は、宅建業法違反です。
断ってもかけ続ける執拗なコール
電話口で明確に拒否したにもかかわらず再度電話をかけてくるのは、宅建業法第16条12に違反する行為です。
威迫・脅迫・長時間の拘束
「今すぐ返事をしないと損をする」など契約しないと不利益があるように脅す、長時間電話を切らせない行為も禁止されています。
勤務先への無断架電
本人の許可なく、勤務先へ電話をかけることも禁止行為です。プライバシーの侵害や業務妨害に当たります。
着信直後にできる! 撃退5ステップ
①違法行為であると明言「宅建業法第16条の12に違反しています」
合法的に相手を撃退し、二度と電話がかかってこないようにするためには、以下に紹介する5つのステップを参考にしてください。
「興味がない」と言うだけではなく「宅建業法第16条の12に違反します。二度とかけてこないでください」とハッキリ伝えましょう。法律名を口にすることで、相手も「法律を知っている」と認識し、再勧誘を諦める可能性が高まります。
②社名・担当者名・免許番号をメモ(録音推奨)
電話がかかってきたら「社名・担当者名・宅建業免許番号」を聞き出しましょう。答えられない、ごまかそうとする業者は、それ自体が悪質である可能性が高いです。スマートフォンの通話録音機能などを使い記録するのがお勧めで、録音データは行政機関に通報する際の証拠になります。
③“免許行政庁へ通報する”と伝える
さらに一歩踏み込み、「電話のやり取りを録音した。再度の勧誘があった場合は宅建業法違反として免許行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)に通報する」と伝えましょう。宅建業者は行政庁からの処分を受けることを恐れるので、効果的な抑止力となります。
④着信拒否&通話ブロックアプリの導入
それでも営業電話が止まないなら、スマートフォンの着信拒否機能を使う、迷惑電話を自動で判別し着信をブロックするアプリをインストールしましょう。
⑤国民生活センター・警察相談ダイヤル#9110へ情報提供
悪質な勧誘が続く、威圧的な言動があった場合は、専門機関に相談することです。消費者トラブルに関する相談を受け付けている国民生活センター、悪質業者の摘発につながる警察相談ダイヤル「#9110」などがお勧めです。
悪質業者の“あるある”3選と見分け方
メリットしか語らずリスクを説明しない
どうすれば悪質な業者を見抜けるでしょうか。まず、「節税や年金対策になる」「必ず儲かる」などメリットばかりを強調し、不動産投資に内在するリスクについて一切触れない業者は要注意です。宅建業法ではリスクの説明義務も定められています。
他社を過度に誹謗中傷する
自社の製品を良く見せるため、他社や他の投資手法を過度に誹謗中傷する業者は、自社の商品に自信がない、正当な競争ができない業者である可能性が高いです。
所在地がバーチャル・レンタルオフィス
住所を検索すると、実態のないバーチャルオフィスやレンタルオフィスということも…。悪質な業者はトラブル発生時にすぐ逃げられるよう、実体のない住所を使用することがあります。
まとめ
営業電話地獄は、電話番号流出×法令無視の勧誘が原因です。しかし、消費者は法律で保護されており、合法的に撃退できる手段を持っています。着信時は法令違反を指摘し、通報の示唆で撃退でき、仮に契約しても8日以内ならクーリングオフ制度も適用されます。情報弱者にならず、録音・証拠・専門家相談の3つで、自身の資産と時間を守りましょう。
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