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海外に住んでも税金はかかる?知らないと損する「日本の不動産」申告ルール!

2025.10.23 Thu

海外赴任や移住で日本を離れても、「実家を賃貸として貸し出している」「収益物件を持っている」など、日本国内に不動産を所有し続ける人は少なくありません。
ところが、自分が海外で1年以上暮らす「非居住者」になると、適用される税ルールが大きく変わります。
本記事では、海外在住者(非居住者)が日本の不動産を保有・運用する際に知っておきたい税金のルールを、わかりやすく解説します。

目次

海外に引っ越しても安心できない!?「日本の不動産」には税金がかかる

海外に住んでいても、日本の不動産から得た利益は課税対象

税法上、日本に税金を納める義務の範囲は、「居住者」か「非居住者」かによって異なります。
居住者とは、日本に住所を持つ、または1年以上日本に住んでいる個人のこと。全世界で得たすべての所得に対して課税されます。 一方、非居住者とは、おおむね1年以上海外に滞在し、日本に生活の拠点を置かない人のことです。この場合は、日本国内で発生した「国内源泉所得」のみが課税対象となります。

つまり、海外赴任や移住で住民票を除票し、生活の拠点を海外に移すと非居住者となり、海外で得た給与などには日本の税金はかかりません。
しかし、日本に残した不動産からの家賃収入や売却益については、引き続き日本の所得税・住民税が課税され、税務署への申告・納税義務が発生します。

不動産投資と税金の関係性については、下記の記事もあわせてご参照ください。

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日本に残した家やマンション――どんな収入が課税されるのか?

具体的には、次のような不動産所得が課税の対象になります。

● 日本の賃貸物件から得られる家賃収入・共益費など
● 日本国内の不動産を売却した際の譲渡所得
● 借地権や駐車場の貸付による使用料収入 など

家賃収入にも20.42%!?知らないと損する「源泉徴収」のしくみ

なぜ借主が税金を払う?意外と知らない源泉徴収のルール

非居住者が日本国内の不動産を貸し出し、その家賃を借主が支払う場合、その支払者(=源泉徴収義務者)は所得税および復興特別所得税として20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)を差し引いた金額を、翌月10日までに税務署へ納める必要があります。
たとえば月額家賃が10万円の場合、借主または管理会社が2万420円を源泉徴収し、残りの7万9,580円をオーナーへ支払います。
この仕組みは、非居住者が税金を納めず海外へ持ち出すことを防ぐために設けられています。

「うちは対象外かも?」居住用と事業用で課税は変わる!

借主が個人で、その不動産を自己または家族の居住用に借りている場合は、源泉徴収の必要はありません。
一方、借主が法人であったり、個人でも事務所や店舗として使用している場合は、源泉徴収の対象になります。

なお、源泉徴収された家賃の20.42%はあくまで「仮払い」です。
最終的な税額は、確定申告で必要経費を差し引いたあとの不動産所得によって決まります。源泉徴収額のほうが多かった場合、確定申告を行えば差額が還付されます。
つまり、確定申告をしないままだと経費が考慮されず、税金を払いすぎている可能性があるということです。

不動産投資における法人化のメリットについては、下記の記事もあわせてご参照ください。

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納税管理人って必要?海外からでも確定申告できる仕組みとは

納税管理人がいないと手続きできない!?海外オーナーの必須制度

非居住者は海外にいるため、原則として日本国内で確定申告などの税務手続きを直接行うことはできません。
そのため、日本国内で税務署からの書類の受け取りや納税、確定申告、還付金の受領などを代行してもらう「納税管理人」を選任し、税務署へ届け出ることが義務付けられています。

国内に不動産収入がある非居住者も同様で、出国するまでに不動産の所在地を管轄する税務署へ「納税管理人の届出書」を提出する必要があります。

確定申告については、下記の記事もあわせてお読みください。

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家族よりプロが安心!税理士・管理会社に任せるメリット

親族や知人を納税管理人にすることも可能ですが、不動産投資の税務は専門性が高く、手続きも煩雑です。
管理会社や税理士、行政書士といった専門家を選任するのがおすすめです。

専門家であれば、非居住者特有の税務処理や不動産の減価償却の計算などを正確に行えるだけでなく、税務署からの問い合わせや調査にも対応可能です。
さらに、源泉徴収された税金が適正に還付されるよう経費をもれなく計上し、確定申告を確実に行ってくれます。

納税管理人は、海外在住オーナーが安心して日本の不動産を運用し続けるための“生命線”といえる存在なのです。

「確定申告が必要な人・不要な人」、あなたはどっち!?

源泉徴収だけでは終わらない!還付を受けるなら申告必須

非居住者の不動産収入は原則として確定申告が必要です。その目的は「納税」だけでなく、「源泉徴収された税金の還付を受けること」にもあります。

家賃収入から減価償却費・ローン利息・修繕費などの経費を差し引いた結果、最終的な税額が源泉徴収額(20.42%)を下回る場合、確定申告を行うことで差額の還付を受けられます。ほとんどの収益不動産オーナーはこのケースに該当します。
また、借り手が個人の居住用で源泉徴収が行われていない場合も、経費を差し引いた後の不動産所得に対する税金を納めるため、確定申告が必要です。

売却損や経費が少ないケースは?例外的に申告不要なパターン

まれなケースですが、経費が少なく、源泉徴収額と最終納税額がほぼ同じ場合は、申告を省略できる場合もあります。
ただし、還付を受けられないため、現実的ではありません。

また、不動産を売却して譲渡損失が発生した場合は原則として確定申告義務はありません。 しかし、他の所得との損益通算や繰越控除を適用したい場合は申告が必要です。

このように、非居住者には確定申告が必要な場合・不要な場合がありますが、基本的には「還付を受け取るための手続き」と捉え、毎年申告を行うのが望ましいでしょう。

二重課税や手続き漏れに注意!海外オーナーの“やることリスト”

居住国との「租税条約」をチェックしておこう

日本は多くの国と租税条約を結んでいます。これは、国際的な二重課税や脱税を防ぐための取り決めです。
たとえばアメリカ・カナダ・シンガポールなどでは、不動産所得に対する税額控除制度があり、日本で納めた税金分が現地で控除されるケースがあります。

居住国と日本との間に租税条約があるか、不動産所得に関する優遇規定があるかを確認し、居住国での確定申告時に日本の納税額を証明できるよう準備しておきましょう。

納税管理人の届出、忘れていませんか?

納税管理人を選任せずに出国すると、税務手続きが滞ってしまい、トラブルの原因になります。出発前に必ず届出を済ませましょう。
併せて、租税条約による優遇措置の有無も確認が必須です。

管理会社にも「非居住者」であることを必ず伝える!

借主や管理会社には、20.42%の源泉徴収を行う義務があります。 非居住者になったことを必ず伝え、借主が個人の居住用かどうか、契約形態も再確認しておきましょう。

まとめ――海外に出る前に「日本の税金」を片づけよう!

海外に移り住んでも、日本国内に不動産を所有している限り、申告・納税義務は残ります。
特に非居住者の場合、源泉徴収・納税管理人・租税条約といったルールを正しく理解していないと、思わぬ課税やペナルティを受けるリスクもあります。

海外生活の準備は慌ただしいものですが、日本の税金を放置することは将来的な損失につながります。
出発前に専門家へ相談し、必要な手続きを完了させておくことが、海外オーナーとして不動産を安心して運用し続ける第一歩です。

海外転勤の際に知っておくべき税金の知識については、下記の記事もあわせてご参照ください。

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