外貨建て金融商品とは?
仕組み・種類・メリットとリスクをわかりやすく解説


株式や投資信託など金融商品は多岐にわたりますが、その多くは円建てで運用されるもの。対して外貨建て金融商品とは、日本円を外貨に両替して運用する金融商品のことです。どういった投資対象があり、外貨で運用することでどのような影響があるのでしょうか。ここでわかりやすく解説します。
外貨建て金融商品とは?
基本的な仕組み
外貨建て金融商品とは、日本円を外貨にして取引・運用する金融商品のことを指します。外貨預金や外貨建てMMF、外貨建て債券などの種類があり、基本的には証券会社や銀行を通じて取引することが可能です。外貨の種類には米ドルやユーロ、豪ドルなどがあり、日本国内で扱われる円建ての金融商品とは異なり、為替レートの変動により資産価値が左右されるのが大きな特徴です。
なぜ注目されるのか?
日本は「金利ある世界」になったものの、政策金利はいまだ0.50%と低水準のまま。国内金融商品だけでは十分な利回りを得られません。他方、アメリカは4.50%、欧州は2.40%、豪州は3.85%と、日本に比べると高金利です。より高い利回りが期待できる海外の通貨や外貨で運用する金融商品に注目が集まっています。
円安になると為替差益を得られるのも注目される理由です。例えば10万円を米ドルで運用した際、1ドル140円で10万円を米ドルに両替すると「10万円÷140円≒714ドル」です。その後、米ドルの価値が1ドル150円に上がった場合、米ドルから日本円に両替すると「714ドル×150円=10万7100円」というように為替差益が生まれます。近年の為替相場では円安トレンドが継続しており、為替差益を期待して外貨建て金融商品に投資する人も少なくありません。
また、外貨建て金融商品はインフレ対策にも有効です。日本円の価値が下がったとしても、外貨資産に価値があれば安心ですし、資産を複数の通貨で保有することで為替リスクを分散し、リスクヘッジにもなるでしょう。
「主な外貨建て金融商品の種類
外貨建て預金
外貨建て預金は、日本円を米ドルや豪ドルなどの外貨で預金する金融商品のこと。外貨の利息が適用されるので円建ての普通預金や定期預金と比べて利回りが高いのが特徴です。外貨ベースでは元本保証も保証されています。
注意したいのは為替リスクです。預金時より円高に進行すると、円に戻した際に元本割れを起こす可能性があります。預金保険制度やクーリングオフを適用できず、為替手数料も高額です。
外貨建て保険
外貨建て保険とは、外貨で保険料を払い込み、保険金や解約返戻金を外貨で受け取る保険商品のこと。外貨の金利で運用するので、円建て保険に比べると解約返戻率が高くなるのがメリットです。一方、外貨で受け取った保険金や解約返戻金を日本円に戻す際は、為替変動の影響を受けます。終身保険や個人年金保険、養老保険など外貨建て保険には数多くの種類がありますが、慎重に検討してから契約することです。
外貨建て債券
外貨建て債券とは、海外の政府や企業が自国通貨で発行する債券のこと。基軸通貨の米ドル建て、あるいはユーロ建て、豪ドル建てなどの先進国通貨建てのものや、南アフリカランド建てなど新興国通貨建てのものもあります。利子や償還金を外貨で受け取るのが特徴で、利回りも高めであることが多く、安定的なリターンが期待できます。具体的には外国債や海外企業の社債などが投資対象となり、先進国に比べると新興国の金利は相対的に高くなります。ただし、発行体の信用リスクや為替リスクには注意が必要です。
外貨建てMMF・投資信託(ETF)
外貨建てMMFは外貨建て投資信託の一種で、主に外貨建ての公社債で運用する金融商品です。格付けの高い国債などが投資対象なので、リスクを抑えた運用ができます。
外貨建て投資信託は、米ドルなど外貨で運用する投資信託のこと。基準価額や分配金は外貨建てで表示されます。その多くは海外で設定・運用される外国籍投資信託で、個人ではアクセスしづらい特定の国・地域の株式や債券などに投資できるのが醍醐味です。景気停滞を続ける日本ではなく、成長著しい国の金融商品にアクセスすることで、大きなリターンも期待できます。海外の取引所に上場している海外ETFであれば、株式のようにリアルタイムで取引できます。
外貨建て金融商品のメリット
高金利通貨による利回りの上乗せ
日本より金利が高い通貨で資産を運用することで、円建て資産では得られない利回りが期待できます。特にインフレ傾向にある国では政策金利が高く設定されていることが多く、日本との金利差収入も魅力的です。
通貨分散によるリスクヘッジ
すべての資産を円建てで保有していると、日本経済の悪化や円の下落による影響を受け、場合によっては資産価値を大きく目減りさせる危険があります。円に加えて米ドル、ユーロなど複数の通貨で資産を保有することで、地域的・通貨的なリスクを分散し、資産全体の保全力を高めることが可能です。
インフレ・円安時の資産価値保全
国際的に円安が進むと、円建て資産は相対的に価値が目減りしますが、外貨建て資産はその影響を受けにくく、むしろ円換算での価値が上昇します。また、インフレ時には物価上昇に伴い、外貨資産の実質的価値を保つ効果も期待できます。
外貨建て金融商品のデメリット・リスク
為替変動による元本割れリスク
外貨建て金融商品の最大のリスクは、為替変動です。円高が進むと円に換算した際に元本割れを起こす恐れがあり、いくら高成長・高金利であっても為替差損が運用益を上回ると、トータルでマイナスになることがあります。
手数料やスプレッドが割高な場合がある
外貨取引では為替手数料やスプレッド(売買価格の差)、管理手数料などのコストが発生しますが、割高なケースであることも。とりわけ銀行の外貨建て預金や保険商品は手数料が高めに設定されていることがあり、運用益を圧迫する要因になりかねません。事前に比較検討することです。
信用リスク・カントリーリスクがある
投資対象に国・企業の財政や経営が悪化すると、債務不履行が起きる可能性があります。こういった信用の低い金融商品は価格が下落したり、発行体が倒産したりすると投資元本が償還されないことも。投資対象の国・地域の政治・経済状況が変化すると通貨や資産の価値が下落する恐れがあり、新興国では国債がデフォルトすることもあります。投資の際は国や地域、企業の信用リスクやカントリーリスクも確かめておきましょう。
まとめ
外貨建て金融商品は、低金利の日本において魅力的な存在です。経済成長や高金利通貨による利回りの向上、資産の通貨分散、インフレ対策などのメリットが期待できます。ただし、為替変動によるリスクやコストの高さ、元本保証がない金融商品もあるので、デメリット・リスクを理解した上で取り組みましょう。投資の目的や期間、自身のリスク許容度と照らし合わせ、適切な商品選びと情報収集を行うこともポイントです。わからない場合は専門家のアドバイスを受けるのもひとつの方法です。
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